“掛けにいくハリ”と“向こう合わせのハリ”
「流れの中で食って一気に突っ走る大型魚を向こう合わせで掛ける。飲まれても口の中を滑ってカンヌキにガッチリと掛かる。こんなハリが欲しかったんだよ」鵜澤政則さんは『D-MAX尾長・真鯛SSキープ』を開発したキッカケをこう語ります。ダイワのD-MAXグレシリーズには、オールラウンドに使える「マルチ」、掛かりの早さを重視した「スピード」、食わせた後の保持力に重きを置いた「キープ」、マルチとスピードには太軸仕様の「パワーマルチ」と「「パワースピード」と合計５つのアイテムが存在します。鵜澤さんはD-MAXグレシリーズを先頭に立って監修したテスターですが、これらはいずれも “積極的に掛けにいくハリ”と言います。「どれもいいハリなんだよ。ウキなり手感なりでアタリを取って食わせるのなら、これらを状況によってローテーションすれば対処できる。ただ、大型の尾長や真鯛のように、速い潮の中で竿先を引ったくっていくような魚にマッチしたハリがなかったんだよね」いわゆる竿引きのアタリを取る、向こう合わせの釣りです。こんな釣りにおいて鵜澤さんがハリに求める要素は、「大型の引きに負けないフトコロ強度」「飲まれにくく魚の口元に掛かる形状」の２点。 相手は60㎝を超える大型魚であり、簡単に伸ばされたり折られたりするハリでは話になりません。尾長は鋭い歯を持つ魚で、ハリを飲まれるとハリスが歯に擦れて切られてしまいます。真鯛は尾長ほど鋭くはないものの硬く分厚い歯を持ち、ここにハリ先が乗ってしまうと簡単に外れてしまいます。「尾長も真鯛も大きくなると口周りの肉も厚い。カンヌキへガッチリ掛けることを考えると、ある程度はフトコロの広さを確保しないとスッポ抜けてしまう。ただ、ハリは魚が掛かると開く方向へ負荷が加わるので、フトコロが広くなるほど伸ばされやすくなるんだよ。このあたりをいかにクリアするかが課題だったね」
形状と線材にこだわる
鵜澤さんがまずこだわったのが「形状」です。ハリを深く吸い込まれても口元まで滑らせて掛けるための工夫としては、ハリ先を内側へ緩やかにカーブさせる「シワリ加工」が一般的です。「ハリ先をどのくらい内側へ入れるかは程度問題で、あまり曲げすぎると掛かりが悪くなってしまう。『D-MAX尾長・真鯛SSキープ』のハリ先は、ちょうどミミのあたりに向く程度のシワリにしたんだ。このくらいが飲まれにくさと掛かりのバランスが取れているね。ハリ先をミミに向けることによって、フッキングパワーの方向性もよくなった。合わせたときの力が逃げずにハリ先へ伝わるんだよ」ハリ軸も飲まれにくいやや長めに設定しました。水中でのハリは重い側（ハリ軸側）を下にして沈下します。これはつまり、軸の長いハリほど水中でも姿勢が安定していること。尾長や真鯛狙いでは激流を攻めるケースも多く、長軸に由来する安定性の高さは嬉しい副作用ともいえます。また、『D-MAX尾長・真鯛SSキープ』は線材や製法を見直し、強度にこだわりました。「粘り強さ、変形耐性の２点を重視して、線材と軸径には細かくリクエストしたよ。このハリで狙う魚は、一期一会の大物かもしれないんだよね。自分が後悔しないためにも妥協せずプロデュースしたよ（笑）」これまで幾度もの負け勝負を味わってきた鵜澤さんが監修した“力負けしないハリ”。ここ一番の大勝負で頼りになるはずです。
|
