- Eichi Mayuzumi
- Yuki Sera
- Motohiro Nonogaki
- Masayuki Hatakenaka
デザイナー
黛 英知
Eichi Mayuzumi
プロダクトデザイナー。DAIWAでも数々の製品を手がけてきた。IM Z LIMITBREAKER TW HD-C開発ではおもに外観デザインを担当。
アングラー
世良 勇樹
Yuki Sera
DAIWAソルトウォーターオフショアフィールドテスター。東京湾でシーバスをメインターゲットにGloryガイドサービスのキャプテンとして活躍中。ガイドとしての腕前はもちろん、ベイトタックルオンリーのスタイルも注目と人気を集めている。
設計担当
野々垣 元博
Motohiro Nonogaki
DAIWAリール製品開発部所属。
企画担当
畠中 正行
Masayuki Hatakenaka
DAIWAマーケティング部所属。
先代の魂を継承
初めてIM Z LIMITBREAKER TW HD-C(以下IM Z)を見たときは、ほんとに鳥肌が立ちましたよ。畠中さんからは「リールのテスト」としか聞いていなくて、電話ではZの「ゼ」の字もなかったのに、現場でいきなりごそっと取り出したのがコレっていう。
ひと目でZの後継機だとわかりました?
ええ、すぐに。
このコメントは黛さん嬉しいですね。
はい。先代と見比べてもらうと、別モノかというくらい実は異なるデザインなんです。“Zらしさを表現するポイント”を押さえてはいますが。
このリールの企画を立ち上げた、私の前任の富田誠さんが、当初から「機能は元より外観的にも先代のイメージを踏襲しつつ、より洗練されたものに」と言っていました。
デザインには“ストーリー”が必要なんです。IM Zの物語には3本の柱があって……
① The soul of Z
② Elegant Surface
③ Sharp Luminous
①は先代Zの魂をデザイン的に継承すること。②はその最大の特徴であるプレーンかつシャープなサムレストと、全体的にシンプルだけれど情緒豊かなサーフェスデザインを現代的に昇華すること。そして③、初めて「LEDを搭載するベイトリール」をデザインするにあたってテーマとしたのが「シャープに光らせる」ということです。
あまりにもくっきりハッキリ光らせてしまうと一気に安っぽくなるんですよね。それでどんどん細く、光で線を引くようなデザインになっていきましたね。
コンセプトカーのテールランプとかを観察するようになりました(笑)。光は膨張して見えたり拡散したりするものだから、思いっきり細くしたつもりでも、まだぜんぜん“デザイン的に強い”んですよ。
IM Zは、パーミングカップ側にこれまでのリールにはなかったユニットやバッテリーが入っているので“中身と外観”は常にせめぎ合いの状態でした。だからIM Zのデザインを詰める段階では、過ごした時間も交わした言葉も、家族より黛さんとのほうが多かったですね(笑)。
私もですよ、家族より野々垣さん(笑)。これはIM Zのクレイ(粘土)モデルなのですが、表面の所々から白い物が突き出ているでしょう。この白いのは“サイズを本物に合わせたダミーのユニット”です。それが飛び出ちゃってるということは……。
つまり「ユニットのサイズを小さくできませんか?」という黛さんからのメッセージだと理解しています(笑)。ユニットを小型化できれば、デザイン性が上がるうえにパーミング性もよくなるので、我々の頑張りどころです。とはいえ、それでも従来のリールに比べると、パーミングカップ側が膨らんでしまったのですが。
テストしていて感じたのですが、IM Zのほうが先代Zよりも手のひらへの収まりがいいんですよ。握り込まなくても、自然にぴったりフィットするというか。ユニットが入ったことの副産物だと思います。 野々垣:パーミングカップ側にユニットとバッテリーが入ったことで、従来のリールより左右の重量バランスが取れていて持ち重りを感じにくくもなっています。世良さんがおっしゃるとおり握りやすさにもこだわっていて、人差し指をTWSの下に回し込んで握ったときに安定感が出るパーミング性を意識したデザインなんです。
しかもZに比べて15g軽量化できている。もちろん剛性や耐久性をアップしたうえで。
さらにIM Zは、これまでのリールとは別次元の楽しみ方ができてしまう。多くの方に体感してほしいです。コレ、ほんとに楽しいリールだから!
オーナーとともに
成長するガジェット
クラッチを切ったら起動音が鳴ってオオッ!?と。LEDも光るし、わくわくと驚きが入り混じってどういう感情かわからなかった(笑)。最初からキャストフィールも飛距離も十分で、ハイパードライブデザインの巻き心地も最高で、あの日は帰宅してからもニヤニヤが止まらなかったですよ。妻に訝しがられたりもして。でも、「DAIWAでNewリールのテストが始まった」とは言えないし。
コンフィデンシャルですからね。
Zの後継機ということで、機能的なイメージはしやすかったです。特長をさらに伸ばす方向で間違いない、と。ただ、そのイメージの範疇を完全に超えるモノをIM Zは備えていた……。
キャストのログを録れる、スマホアプリ連携することにより新機能をダウンロードできる等々、IM Zはスマホと繋がるリールです。
「とっつきにくい」と感じる人もいるだろうけれど、拡張性や使いこなす楽しさがきっと勝つと思う。“成長するリール”なんてなかった。
IM Zの開発では何かとPCに繋いで作業することが多かったのですが“リールをPCに繋いでいる”ことが、最初は違和感でしかなかったです。
そうだったんですね。
でも、割とすぐに見慣れました。今や何でもPCやスマホと繋がる時代なので、リールにもそういう楽しみやガジェット感があったってイイなと。IM Zは間違いなく釣具であるのと同時に、インターフェイスのような存在でもあるんです。
(充電端子が)Type Cや!みたいな(笑)。
はい、Type Cです(笑)。
端子カバーのフタとかに防水機器っぽさがあります。
防水・防塵のスマホや、防滴・耐衝撃のデジカメを分解して研究しましたからね。
「ここに村上晴彦さんの
キャストデータがあります」
厳密に言えば参考値で「放出したラインの長さ」ですが、このキャストなんか余裕の100mオーバーですよ。実際の飛距離も100m前後に達していますね。投げていたのはヘビキャロシンカー1oz.です。
すげー!一日のキャスト数は148回と少なめですね。
この日はウェーディングで立ち込んでのテストで、MAX飛距離をねらって渾身のキャストをしてもらっていたので、投げた回数は少なかったですね。
僕の記録はないんですか?
もちろんありますよ。カレンダー機能にメモっておいたので……、例えば9月28、29日に撮影を兼ねてテストしてもらいましたよね。28日はトータル約200投しました。ファーストキャストが14時で、この日のトップ5の飛距離がこの5投で……。
横軸が時間経過ですよね。この時間帯、飛距離が短くて、キャスト数が少ないな……。あ、お台場沖でストラクチャーを撃ってたときですね。
近距離からピンスポットをねらっていましたね。「無駄撃ちしませんよ。余計なプレッシャーかけちゃうだけですから」と言ってました。
そうでしたっけ?(笑)。そのあとの時間帯は飛距離もキャスト数も伸びてます。これは横浜沖へ移動して中・長距離の釣りに切り替わったからですね。めっちゃ面白い!
飛距離とキャスト数で、どこでどんな釣りをしていたか完璧に思い出せますね。
これ、上達のための貴重なデータですよ。自分で記録しようとしたらもの凄く大変ですけど、IM Zなら釣りをするだけで勝手にログが貯まっていく。飛距離やキャスト数とエリアは、そのとき使っていたルアーとも結びつくので、IM Zのオーナー自身が読み解くデータとしては、かなり詳細な釣行記録と言えますね。IM Zオーナーごとにクセや特徴まで視える化できます。あらためてヤバいっすね、このリール。
追加ブレーキモードの開発もよろしくお願いします。
よろこんで!
これっていろいろ“仕掛けられる”リールだと思うんです。例えば、「スマホアプリを介してNewブレーキモードを配信します。条件・MAX飛距離80mをクリア」みたいなこともできちゃうわけです。
え……、自分で開発したブレーキモードなのに、条件をクリアしないと僕も使えないんですか?
そうなったら頑張って80m投げてください(笑)。まぁ世良さんなら余裕でしょうけど。
IM Zは自分たちの前に道のない仕事でしたね。報われる瞬間がもうすぐ来ますよ。発売日にこのチームで美味しいお酒を呑みたいですね。
そうですね、ぜひ。
いいですね。呑む前に僕の船で食材確保に出ましょうよ、もちろんIM Zを使って。船の燃料代は、ロングキャスト勝負で負けた人がもつということで(笑)。