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へらマスターズ


~「一投一枚」。磨き抜かれた深ダナの妙義~
2016ダイワへらマスターズ全国決勝大会 in 友部湯崎湖

昨年は「筑波流源湖」にて、岡田健司選手が衝撃的な初優勝を飾ったダイワへらマスターズ全国決勝大会。今年は同じ茨城県笠間市の人気管理釣り場「友部湯崎湖」にその舞台を移す。


大会前の「トピック」として付け加えねばいけないのは、あの「ミスターへらマスターズ」浜田 優選手の地区予選での敗退であろう。これで残念ながら23年で連続出場(バトルカップ含む)は途絶えてしまったが、カリスマと呼ばれる浜田選手であってもマスターズ全国への道は簡単ではない、ということ。

それほどに、マスターズ全国決勝大会の舞台というのは、もしかしたら人生に一度きりになるかもしれない、まさに最高峰の舞台なのである。


さて、大会会場となった友部湯崎湖、である。

放流されている新べらも落ち着き、大会が近付くにつれて釣果も尻上がりに良くなっている状況での開催。さすがに両ダンゴのシーズンは終わりという感じではあったが、浅ダナ(マスターズ大会規定はメーター以上)、チョウチンともにウドンセットの釣りで高釣果が頻発していた。そして、選手達に聞くと、浅ダナでも釣れなくはないが、チョウチンの方がアタリ数、安定感ともに上回っている…という情勢であった。


カリスマ不在の中、新たな新生が飛び出すのか。

はたまた、実力拮抗の中堅勢がついに頂点に立つのか…。


初日雨、二日目小春日和…というドラスティックな天候変化の中、見応えある激闘が繰り広げられる。

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岡田選手よりグローブライド(株)藤掛 進常務に、昨年度優勝カップの返還 前夜祭で挨拶する日本へら鮒釣研究会理事長の遠藤克己氏

【予選リーグ】

和やかな前夜祭から一夜明けた11月19日(土)。未明から降り続く雨の中、まだ暗い友部湯崎湖に続々と選手達がやってくる。

関東、関西、東北、そして韓国…。各地の厳しい予選を勝ち抜いた選手達に、昨年シードの岡田健司選手(優勝)、辛宗泌選手(2位)、柴﨑誠選手(3位)、斉藤心也選手(3位)を加えた総勢24名の選手達は、前夜祭での抽選によって4名ずつ、AからFの6ブロックに振り分けられ、各ブロック内で1対1の総当たり戦を三試合行う。マスターズ伝統の1対1の対戦方式である。準決勝へと駒を進めることが出来るのは、各ブロックたったの1名のみ。


前情報では、やはり「チョウチン強し」。多くの選手達が短竿のチョウチンウドンセットを選択するようだ。スタイルとしては最盛期を意識したパワー系ではなく、どちらかといえば冬を意識した「抜き系」が主流。バラケのナジミ幅をほとんど出さず、上から落下させ、ゆっくりと落ちていくクワセエサとシンクロさせる。さらにそこにタテサソイを組み込むことで確実に食わせていくという最新釣法。試釣でこの釣りをきっちり仕上げてきたという山村慎一選手を始め、斉藤心也選手、水杉良正選手、またこの釣りの使い手として知られる奥 貴至選手らに注目が集まる。


対するメーター組は、やはりこの釣りのスペシャリストである天笠 充選手が「大本命」。池の状況的にはチョウチン有利とはいえ、天笠選手のメーターは次元が違う。さらには今季も各大会で絶好調であり、必ず何かやってくれるはず…という期待感が会場に充満していた。

また、昨年シードの柴﨑選手らの実力者数名もメーターで大会に臨むようで、その動向に注目が集まった。


7時30分、予選第一試合がスタートする。競技時間は全試合2時間。10時より第二試合、昼食休憩を挟んで13時30分より第三試合となる。

マスターズは全試合1対1の対決制度を採用(準決勝のみ3名1人抜け)、とにかく相手に「勝つ」ことが最優先事項だ。全勝(3勝)すれば文句無し。2勝1敗で並んだ場合は直接対決時に勝った方、三すくみの場合のみ、釣った総重量の比較で予選通過者を決定する。

特に今年は他を圧倒して早々に突破を決めてしまうような選手はなく、全てのブロックで最終結果確定が第三試合までもつれ込む大激戦となった。


まったく止む気配のない雨の中、4号桟橋に並んだ選手達は、早々に竿を絞り込み始める。 前評判ほどメーターは悪くはなく、特に朝の高活性時はチョウチンに遜色ない釣れっぷり。Eグループ天笠選手は第一試合からさすがに強さを見せつけ、順当に勝ちを積み上げていく。


しかし、全体を見れば、やはり「チョウチン強し」の傾向か…。


中でも目立ったのが、Aグループの山村慎一選手。初戦段差の底釣りで不気味な強さを発揮していた実力者・廣部良治選手を僅差で退けると、二試合目は昨年チャンプの岡田健司選手を、なんと15㎏オーバーの激釣で退け、完全に勢いに乗る。全体としては10㎏オーバーを釣ればかなりの高釣果…という状況の中、山村選手の15㎏級連発は、かなりインパクトのある釣果であった。そして、「今年のマスターズは山村強し」の印象を会場全体に強く与えるものとなった。

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終始土砂降りの予選リーグ。Aグループ、絶好調の山村慎一選手(右)の隣で、段底で接戦に持ち込んだ廣部良治選手(右) 力強いチョウチンセットで予選リーグを制圧した山村慎一選手

Bグループは三者が2勝1敗で並ぶという大激戦。チョウチンセットを操る水杉良正選手が、初戦の敗退から復調し、第二試合で高釣果を叩き出して、そのまま逃げ切る。


Cグループもまた、激戦。斉藤心也選手と奥 貴至選手の争いとなるが、直接対決を制した斉藤選手に軍配が上がる。斉藤選手は試合が進むたびに調子を上げ、最後は14.6㎏という高釣果を奪取。俄然、山村選手の対抗として名乗りを上げてきた。


Dグループでは、「新生」がドラマを起こしていた。

このグループの大本命は、一昨年あの浜田 優選手を打ち破って全国優勝まで駆け上がった山形の新鋭、今季も各大会で絶好調の時田光章選手。予選リーグも難なく勝ち上がり、翌日の準決勝に駒を進めるものと目されていた。しかし、そこに待ったをかけたのが、セットマスタークラブ所属の星野智明選手だった。星野選手のキレ味鋭いチョウチンは安定感と攻撃力を兼ね備えた「本物」で、その時田選手を直接対決で制し、「波乱」を巻き起こすことに成功するのである。


Fグループも実力者が揃う激戦区。ハイレベルなメーターセットを操る板平寛光選手と昨年シードの柴﨑誠選手によるメーター対決となり、辛くも柴﨑選手が直接対決を制して準決勝への切符を手にすることとなる。

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昨年2位の辛選手(右)は、惜しくも予選リーグ敗退

結局、最後の最後まで降り続いた冷たい雨。

最悪のコンディションにも関わらず湯崎湖のへら達の食いは予想以上に活発で、「チョウチン絶対有利」の中で、メーター勢の奮闘も目立った。


しかし、やはり釣果的に抜きん出ているのはチョウチン勢か…。中でも予選リーグで圧倒的な強さを見せた山村選手に注目が集まる。


メーターセットのスペシャリスト天笠選手、斉藤選手、柴﨑選手の「シード常連組」、さらには予選を通して俄然、釣り方が合ってきている星野智明選手、そして斉藤選手と同スタイルの水杉良正選手…と、誰が決勝に進んでもおかしくない、実力伯仲の準決勝進出の顔ぶれとなった。


試合後、ホテルにて行われた中夜祭における抽選にて、準決勝はAグループが星野、天笠、柴﨑選手、Bグループが斉藤、水杉、山村選手、という組み合わせに決定。各組1名のみが栄光の決勝戦に進出することとなる。


Aグループは星野選手がチョウチン、天笠&柴﨑選手がメーター。

Bグループは全員がチョウチン。


果たして、結果は如何に。

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準決勝Aグループ 準決勝Bグループ

【準決勝&シード権獲得戦】

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大会二日目の朝

明けて11月20日(日)。前日の雨が嘘のように、朝から穏やかな日差しが降り注ぐ。心配された気温低下もなく、日中は逆にかなり暖かくなるという。快晴無風、絶好の釣り日和だ。


準決勝は敗れた選手達全員による(前年優勝の岡田選手は規定により既にシード権を保持しているために欠場)翌年度地区大会決定戦シード権獲得戦と同時に、7時30分にスタート。準決勝の6名の選手は4号桟橋5号桟橋向きに、向かって左手、Aグループが星野、天笠、柴﨑選手、Bグループ斉藤、水杉、山村選手…の順に並ぶ。竿は、星野、天笠選手が9尺、柴﨑選手が10尺、Bグループの三人は8尺。

Aグループの注目は、ただ一人チョウチンの星野選手に対し、メーターの天笠、柴﨑の両実力者がどういう戦いを見せるのか。逆にBグループは「チョウチン対決」に注目。中でも予選リーグ絶好調の山村選手がどういった戦いを見せるのかにも、ギャラリーの注目が集まった。


7時30分のスタート直後、いきなりBグループの山村が掛ける。

やはり「山村強し」か…。しかし、会場にそんな空気が流れたのは、まさに一瞬だった。

開始から5分もすると、各選手がバタバタと竿を絞り込み始める。湯崎湖のコンディションはさらに上向きのようで、メーター、チョウチンともに遜色ない釣れ方。メーターの天笠、柴﨑選手もすぐにアタリをもらえているようで、盛んにアワせていく。

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力強いチョウチンセットで天笠選手をリードしてく星野選手

Aグループは、ある意味「意外」な展開となった。

池の状況的にはチョウチンが強しと言えども、実力、そして大舞台での経験が頭一つ抜けている天笠選手が、なんだかんだと言っても強いのでは…というのがギャラリーの見方。


しかし、そんな空気を強引なまでに払いのけたのが、星野選手だったのだ。


チョウチンの星野選手は、「バラケはいったんはタナまで届かせるものの、タテサソイの動作でパンっと強引に抜き、そこからは食わせるタテサソイを畳み掛ける」…というスタイル。完全な水面抜きスタイルではないせいか、アタリも早く、時にはバラケを食って大型が水面を割る。隣の天笠選手も順調に釣っている。しかし、その上を行ってみせるのである。


Bグループの「チョウチン対決」は…。

予選リーグの結果から注目された山村選手ペースが上がらない。いったい、何が起こっているのだろう…。アタリをもらえず、首を傾げるシーンも目立つ。

その横で、ジワジワと釣り込んでいたのが斉藤選手だった。

ややバラケを持たせ気味にして最盛期寄りのスタイルであった山村選手に対し、斉藤選手はほぼ完全な「抜き系」スタイル。なんせエサ落ち目盛の設定は「水面上に1目盛出し」なのだから、そもそもバラケをトップで支えようという意図がない。バラケを上層から振らせつつ、クワセだけの状態でゆったりと大きなスイングでタテサソイを繰り返しつつ、「食うまで繰り返す」…といわんばかりのしつこさで、スローなリズムながら確実に食わせていくのである。


「打ち始めてすぐに釣れるような時は、よくない証拠。嫌な予感どおり、打てば打つほどアタリが遠退くような状態で、終始波に乗れませんでした。予選で決まり過ぎたのも柔軟な対応を遅らせたのかもしれません。完敗です」

試合後、謙虚な山村選手はそう言って完敗を認める。

ほんの少しのズレが、ここまで残酷に結果として跳ね返ってくる。彼らはそれほどデリケートな領域で勝負しているのである。


精密かつ豪快なチョウチンで、あの天笠選手をグイグイと引き離していく星野選手。 沈黙する山村選手、終盤にかけてペースを上げてきた水杉選手を振り払い、最後まで落ち着いてカウントを重ねて行った斉藤選手。


特に水杉選手は最終的には3枚差まで斉藤選手に肉薄したが、一歩及ばず。普段から釣行する仲間で、そのスタイルも「ほぼ一緒」というチョウチンセット。試合後、「水杉さんがどういうふうに釣っているかは知っていたので、水杉さんが釣れるなら自分も釣れると信じて、焦らず丁寧に釣っていきました」と語った斉藤選手の落ち着きが光った準決勝だった。準決勝の常連、やはり伊達に場数を踏んでいない。


惜しくも準決勝を次点で敗退した天笠選手、水杉選手には、翌年度全国大会のシード権が。また各組3位の 柴﨑選手、山村選手には、翌年度地区大会シード権が与えられた。


同時開催された「シード権獲得戦」では、予選リーグで斉藤選手に苦杯を舐めさせられた奥 貴至選手が10.3㎏を釣ってトップ。以下、廣部良治選手、鈴木千秋選手、姥貝秀樹選手の計4名の実力者達が、翌年度地区大会シード権を獲得し、大会を終えた。

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準決勝。Bグループ山村選手、Aグループ柴﨑選手が開始直後に掛けるが…
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Bグループでは斉藤選手がリードを奪う

決勝戦が近付くにつれ、不気味に曇り空が頭上を覆い始めた友部湯崎湖。


ついに決勝の舞台に駆け上がった斉藤心也選手が、念願成就を果たすのか。

はたまた、「新鋭」星野智明選手が勢いのままに駆け上がるのか…。


チョウチン対決となった2016年のへらマスターズ決勝戦。

果たして、勝利の女神はどちらに微笑むのか。

決勝戦の舞台には、衝撃の展開が待っていたのである。

【決勝戦 ~チョウチン対決。静かなる圧勝劇~】

10時30分、いよいよ2016へらマスターズ覇者を決める決勝戦が4号桟橋にて始まる。

対面の5号桟橋には、運営スタッフ、報道、一般ギャラリー、そして惜しくも敗れた全ての選手達が集まり、たった二人の選手の一挙手一投足に視線を注ぐ。

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決勝戦を前に握手

向かって左が星野智明選手、右が斉藤心也選手だ。


予想以上の活性で、前評判ではあまり芳しくなかったメーター勢も奮闘した湯崎湖。しかし、ここまで来たのは、やはりチョウチンセットの二人だった。


決勝戦、斉藤選手は満を持して最短の「荒法師 武天」7尺をロッドケースから引き抜く。

「桟橋に二人のみ」というシチュエーションを想定して、少しでももたつきを防ぐための「決勝仕様」だった。 対する星野選手も、準決勝までの9尺から8尺(月光)に持ち替えて決勝に臨む。


同じ「抜き系」のチョウチンセットながら、いったんはバラケをタナまで入れてから抜く「タナ抜き」の星野選手と、仕掛けがタナに届く前にハリから落としてしまう「上抜き」の斉藤選手と、そのスタイルは「正反対」とも言える。

この違いが結果にどう現れるのか…。

特に二人の「強さ」を身をもって感じてきた参加選手達は、固唾をのんで勝負の行方を見守っていた。


頭上を黒い雲が覆い始めていたが、雨の心配はなさそうだ。風の影響もない。
10時30分、ついにマスターズ最後の戦い、2時間の「頂上決戦」がスタートする。



開始から2分後、最初にアワせたのは星野選手。しかしこれはスレで、途中でバレる。

対する斉藤選手は、2投目で竿を曲げる。こちらはガッチリ食っていて、フラシに入る。さらに驚いたのは、次投も3回目のタテサソイでヒットさせ、いきなりの連続ヒット。

思えば、このスタート直後の斉藤選手の連続ヒットが、決勝戦の全てを象徴していた…。


いきなり強烈な寄りに苦しんでいたのは、星野選手だった。

振り込み時、すぐにウキを返さず、垂直にスルスルとミチイトを水中に入れていく星野選手。少しでも抵抗を減らし、少しでもスムーズにエサをタナに届けよう…という意図が伝わってくる。

しかし、そんな星野選手をあざ笑うかのようにウキは踊りだし、しだいに収拾のつかない状態に…。

星野選手の「いったんはバラケをタナまで持たせる」というスタイルも、決勝戦では裏目に出た。バラケがハリに付いている分、よけいなへらまでがタナまで付いてきてしまうのだ。もちろん、アタリはある。しかし、そのほとんどがスレ…。竿が曲がる回数は斉藤選手より圧倒的に多いが、まったくフラシに入らないのだ。

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決勝で星野選手に思わぬ展開が待ち受けていた。通常なら優勝ペースなのだが…

対する斉藤選手…。

「上抜き」スタイルの斉藤選手である。星野選手以上に寄り過ぎやウワズリに手こずるのではないか…と筆者は見ていた。


しかしどうだろう。

ここは経験の差が出たのか、はたまた決勝までを見据えた戦略を持っていたのか…。


斉藤選手は、高ヒット率を生み出す「バラケのナジミはゼロ」というスタイルはそのままに、バラケのタッチを「決勝仕様」に大幅に修正。手水で大胆に練り込んでボソを潰し、軟らかいダンゴタッチに変更。さらには、このバラケを豆粒のように小さく付けることで、必要以上の寄りとウワズリを抑えながらもタナに到達する直前にはハリから抜き、見事に「決勝仕様の抜き系」の釣りを成立させたのである。下ハリスの長さも、準決勝まで決まっていた45㎝をあっさりと捨て、35㎝に修正。このあたりの思い切りと冷静さも見事だった。

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斉藤選手の釣り姿。まるでへらが並んでエサを待っているかような爆釣。

シードの常連。

何度も何度も「一歩手前」で涙をのんできた斉藤選手満を持して見せた「神対応」だった。

あの伝統のマスターズ決勝戦、1対1という状況…。

斉藤選手は落ち着き払い、目の前のウキだけに集中していた。


スレアタリに翻弄され、どうしてもリズムに乗れない星野選手の横で、斉藤選手のチョウチンが突き進んで行く。

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執拗なまでにタテサソイを繰り返す斉藤選手

11時30分、斉藤選手が19枚に対し、星野選手が8枚。
開始から1時間が経過した時、その差はすでに決定的となっていた…。


そしてその差は詰まることなく推移していく。


「ああなっちゃうともう、心也君の釣りは手が付けられないよ(苦笑)」
予選で斉藤選手と当たったという某選手が、呆れたようにそう言って両手を挙げた。


さらに続ける。


「最小限のバラケで、食うまでサソっているすごいスローリズム。極端に言うと、常に打ち始めの新鮮な状態が続いているわけ。でも言うは易しで、すぐに出来るような代物じゃない。普段から相当練習しているだろうし、実際に今年はよく釣っているよね。決まるとまったく空振らないんだよ。対戦する方はたまらないよ。自分の釣りを止めたくなっちゃうもん(苦笑)」


深ダナの妙義。超高ヒット率。

確かに、こうして対岸で見ている分にはいいが、実際に対戦するには「最悪」な相手だろう。

ここまで対戦相手を「圧倒」するマスターズ決勝も、初めてかもしれない。

斉藤選手が釣るたびに、ギャラリーからは気だるい溜息が漏れる…。

星野選手もなんとか釣り方を修正し、徐々に持ち直していくものの、いかんせん相手が悪過ぎた。


12時30分、なんとも不思議な雰囲気のまま2時間が過ぎる。


37枚対18枚。

文句無し、斉藤心也選手の「静かなる圧勝劇」であった。

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両日ともにお昼は笠間名物の美味しいお弁当が選手スタッフに配られた

【2年前から徹底的に磨き上げてきたチョウチンセット。戦略、対応、そして地合…。全てが完璧にハマったマスターズ史に残る圧勝劇】

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ついに斉藤選手が表彰台の頂点に立った。

通常どんな大会でも、何年も表彰台が続くと、逆になかなか優勝出来なくなるものである

斉藤心也選手も、マスターズにおいては柴﨑誠選手と並んで「表彰台」の常連。

毎年、まるでデジャヴを見るかのように、表彰台の3位のスペースに二人で並んで「来年こそ」のインタビューを受けてきた。


3位になることも、もちろん、それはそれで大変なことである。ましてそれを毎年続けるとなれば、なかなか出来ることではない。


その実力は誰もが認めながら、なぜか「決勝」の舞台が遠かった斉藤選手。


そんな斉藤選手が、ついに2016年のマスターズで決勝戦に駆け上がり、「圧勝劇」で頂点を極めたのだ。いったいそこには、どんな心理状態が横たわっていたのであろうか。


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念願のへらマスターズの優勝トロフィーに名を刻んだ。

「今回は試釣の段階から、不思議と迷いがなかったんですよね。試釣は大会直前の二日間に行なったんですが、まず初日に、メーターや他の釣り方を捨てました。段底も得意な釣り方ですし、釣れる感触もあったのですが、それ以上にチョウチンがよかったのと、段底は釣り座に左右される(底の状態が変わって)ことがあったので、思い切って捨てました。で、試釣二日目は、チョウチンだけをやり、魚の寄りの状態等をチェックして、竿の長さだけを試しました。ほんと、不思議なくらい『予選リーグはこんな感じで、準決勝、決勝は…』という最後までの道筋が見えていたんです。そして立てた作戦が全て、本番でピタッとハマりました」



何年も「一歩手前」で苦杯をなめてきた斉藤選手。しかし、優勝する時というはこんなものなのだろうか。

しかし、斉藤選手は今回炸裂したチョウチンセットを、2年ほど前から「釣れる釣り方」として徹底的に練習してきたのだという。



「もともと、スローなリズムが好きですし、そういった釣りの方が得意なんです。季節的にも、冬が得意。なので、もしも開催時期が1カ月早かったら結果はまったく違っていたと思います。今回の釣りも、寒くなればなるほど、混雑して渋くなればなるほど、その強さを発揮する釣り方。普段釣行している関西の釣り場にもマッチしているので、実戦を通して練習出来ていたのも大きかったと思います」



埼玉県出身の斉藤選手だが、今は職場のある兵庫県に居を構えている。当然、週末の釣りは関西のフィールドがメイン。関東に比べて魚影が薄く、混雑にも慣れていない関西のフィールドは、週末ともなれば容易に食い渋る。実はそんな中で圧倒的な強さを見せていたのが、今回の斉藤選手の釣りだったのである。


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恒例の優勝者の胴上げ

「予選、準決勝は、ほぼイメージどおり。ただ桟橋に二人だけになる決勝戦だけは、ちょっと思い切った変更を加えました。まあ想定通りといえば想定通りなのですが、決勝戦は初めてでしたので、始まってみなければ分からない、というのはありましたよね。ただ今回は試釣から大会本番を通して自分でも不思議なくらい落ち着いていて、冷静さを失う場面がまったくなかったことが第一の勝因ではないでしょうか。予選リーグを含めて全試合、スタートダッシュに成功出来たのも、落ち着いて試合運びを出来る要因でしたね。特に準決勝の山村さんは、予選でも決まっていたので恐かったのですが、山村さんのスタイルはバラケも持たせ気味で、クワセもウドン(重めの煮るタイプ)、ハリスも張らせ気味で釣っていましたので、自分とは正反対のスタイル。山村さんが決まるなら自分はダメだろうし、逆に山村さんが釣れないなら自分に芽がある…と、妙に冷静に俯瞰できていたんです。逆に隣の水杉さんの方が自分と同じようなスタイイルでしたので、嫌だったですね(苦笑)」



何年も何年も寸でのところで手が届かず、スルリと指の隙間からすり抜けていった決勝戦の舞台。
そんな大舞台で、冷静さを失っても何ら不思議はない。


しかし、斉藤選手は、最後の最後まで落ち着いて冷静に状況を判断し、思い切った対応で「決勝仕様」の釣りへと即座に自らの釣りをマイナーチェンジしたのである。



「それまで(準決勝)釣れていたので少し不安もありましたが、小分けしたバラケを思い切って練り込んで、小さく付けました。抜く位置も下げて、水面近くではなく、オモリに近いところで抜けるイメージです。これでなるべく寄せないよう、静かに釣っていくことを心掛けたのがよかったんだと思います。なんせ決勝戦はバラケの必要がないくらい魚はいましたから(苦笑)」



「桟橋に二人のみ」という、普段の釣行でもなかなか体験出来ない「異常な空間」となるへらマスターズ決勝戦。昨年までは、その様子を対岸から見守るだけだった「静かなる男」が見せた、会心の圧勝劇。


挫折にめげず、苦労に苦労を重ねてつかんだ「頂点」だった。

【斉藤心也選手 データ】

竿 ダイワ「荒法師 武天」7尺(決勝) 準決勝までは「月光 剛」8尺
道糸 0.7号
ハリス 上0.5号 下0.3号 8―45㎝(予選、準決勝) 35㎝(決勝)
ハリ 上「極ヤラズ」9号 下「喰わせヒネリ」3号
ウキ 山六 抜きセット用 カヤボディ5㎝ 極細グラスムクトップ仕様(エサ落ち目盛は、全10目盛中、1目盛出し)
バラケ 「粒戦」100cc+「粒戦 細粒」50cc+「セットガン」100㏄+水250cc+「セット専用バラケ」200cc+「セットアップ」100cc
クワセ 「さなぎ感嘆(感嘆1袋に対してさなぎ粉30cc)」10㏄+水10㏄
基本的にはバラケのナジミを入れない「抜き系チョウチン」で、冬場や混雑時に強さを発揮する釣り方。バラケは上から開かせ、クワセだけの状態でタテサソイを繰り返し、10回くらいサソったところで戻りしなに出る「チッ!」という倒れ込みの小さなアタリが本命。アタリの大きさは半目盛か黒帯くらいのものが多かった。聞きアワセ的な感じで、掛かっていなかったらそのまま戻し、またタテサソイを続ける。スローなペースを維持するのは勿論、なるべく打ち返さないようにして、よけいなへらを寄せ過ぎないように気を付けた。決勝戦では桟橋に二人だけになることから、セッティングを修正すると同時に、バラケも思い切って練り込んで、ダンゴタッチに変更。これを小さく付けてタナ付近で抜き、リズムもさらにスローにして、寄せ過ぎないように心掛けた。
2年くらい前から練習している得意な釣りで、試釣の段階で手応えがあり、自分でも不思議なくらい迷いがなく、大会を通じて冷静に戦えたことが勝因。初めての決勝で優勝出来て、大変嬉しく思います。

【星野智明選手 データ】

竿 ダイワ「月光」8尺(決勝) 準決勝までは9尺
道糸 0.8号
ハリス 上0.6号 下0.4号 上9㎝(準決勝まで) 7㎝(決勝) 下35㎝
ハリ 上バラサ7号 下極関スレ5号
ウキ 自作  カヤボディ10㎝ 0.55ミリ径グラスムクトップ カーボン足7.5㎝(エサ落ち目盛は、全14目盛中、クワセを付けた状態で1.5目盛出し)
バラケ 「粒戦」120cc+「粒戦 細粒」30cc+「ダンゴの底釣り夏」30cc+「セットガン」120㏄+水170cc+「段底」60cc+「パウダーベイトスーパーセット」60cc+「セット専用バラケ」30cc+「底バラ」30cc
クワセ 「感嘆」10ccカップ9分盛+残りを「感嘆Ⅱ」+水10cc
ウキをいったんは沈没させて、その後にサソイでバラケを抜く「タナ抜き」のチョウチンセット。バラケを抜いた後、3回までのタテサソイでアタらせるのがヒットパターンだが、1回目のサソイの直後は最もヒット率が高く、2回目、3回目と回数を重ねるごとに下がっていった。試釣の段階で、自分の釣りでは準決勝までが限界で、もしも決勝まで進んだら寄り過ぎてダメだなと思っていたが、その通りになってしまった。ウキやハリスの調整でなんとかしようとしたものの、上手くいかなかった。
自分はそもそもタックルで釣っていくタイプで、一番重視しているのは、タテサソイで持ち上げた後にトップが戻るスピード。ここで食うか食わないかが決まると思っていて、このスピードを考えてトップの太さを換えていくのだが、今大会では0.55ミリ径のグラスムクがバッチリ合っている感じだった。
準決勝まではイメージどおりの釣りが出来たが、決勝戦は完敗。いい経験をさせて頂きました。また勉強し直して、来年また頑張ります。