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DAIWA 源流の郷 小菅村
DAIWA 源流の郷 小菅村
豊かな森が水を育み、水がいのちを育みます。
次世代を担う子どもたちに、水の尊さを自ら体感して欲しい、と考えております。
源流の山里、そこに暮らす人々が森林を育て、その森林が生きた水を育み、そして海をも豊かなものへと保ちます。
水がいのちを育む、その源とも言える豊かな森林「源流の郷」をお伝えします。
源流探検部が行く 第3回
源流域を守る渓畔林で生き物の息吹を体感
源流域を守る渓畔林で生き物の息吹を体感
初夏の源流域は生き物の宝庫

カレンダーが六月に切り替わった日、BE EARTH-FRIENDLY源流探検部は3度目の源流探検に出かけた。今回の舞台となる雄滝は、多摩川源流域の上流部に位置する、美しい滝だ。

実は、四月に行った第一回目の探検でも、探検部は雄滝も訪れていた。その時は冬木立に水音が響くだけのひっそりとした空気を漂わせていたが、初夏を迎えた今、どうなっているのだろう。

小菅村役場 源流の村づくり推進室の青栁慶一さんのガイドで、雄滝へ続く遊歩道を歩いていくBE EARTH-FRIENDLY源流探検部。

林道に車を止めて遊歩道に入ると、そこは四月とはまるで別世界だった。木々は陽光を求めて枝を伸ばし、新緑よりも深みを増した葉が重なり合う。前日の雨をたっぷり含んだ森の中は、土や花、草木の匂いが混じり合い、森全体にかすかに甘い匂いが漂っている。

四月に来た時は崖下を流れる川音しか聞こえなかったのに、あちこちから葉の擦れる音、音階の違ういくつもの鳥の鳴き声が聞こえてくる。音の種類の豊富さは、森の豊かさそのものだ。

遊歩道を入ってすぐ、「この付近クマの出没注意」という注意書きに思わず足を止めた。

「クマが出るんですか?」

驚いて、ガイド役を務めてくれる小菅村役場の青栁慶一さんに尋ねる。青栁さんは、「ここ2~3日、出没情報がありますね」と落ち着いた表情で頷いた。

「いろいろな生き物が共存するってことは、それだけここが豊かな森林だってことだね」

探検部メンバーの言葉に、みんなが頷いた。

遊歩道の入り口にあった注意書き。この2~3日前から熊の出没情報があったという。小菅村ではあらゆる動物が共存しているのだ。

「こうした渓流沿いに広がる森のことを、渓畔林と言います。渓畔林は普通の森に比べて植生が独特なんですよ。湿ったところが好きで、太陽光が好きな木がたくさん生えているんです。渓畔林は生えている木の種類が違うので、注意して木を見ると面白いですよ」

前回、松姫峠の尾根の遊歩道を案内してくれた小菅村役場 源流振興課の中川徹さんが、そんな話をしてくれたことを思い出した。

けれど、トレッキング初心者の目には、その違いがよくわからない。わかるのは、丸い葉っぱ、細長い葉っぱ、縁にギザギザ(鋸歯)がある葉っぱ…と、遠目には同じに見える葉が、いろいろな形をしているということくらいだ。

丸木橋が見えてきた。4月に来た時、小菅川にかかる木の橋が冬木立や落ち葉の色と同化し、この辺りはのっぺりと色のない世界に見えた。ところが、目の前の丸木橋を覆う木々には陽光が透ける葉が茂り、川原の岩はビロードのような深緑の苔をまとっている。同じ場所なのに、緑のグラデーションがあるだけで、森の奥行きが感じられるのが不思議だった。

雄滝へ向かう遊歩道の途中、小菅川にかかる丸木橋。六月の丸木橋(左)と、四月に訪れた時の丸木橋(右)。同じ場所でもまったく印象が異なる。

川沿いの平らな場所で、大きな木が何本も並んでいることに気づいた。前回来た時には気づかなかったけれど、足元には「やまなしの森100選 小菅川雄滝のシオジ林」と書かれた看板まである。

「これがシオジの木です。中川が言っていた『小菅村の渓畔林の代表的な木』です。背が高くなる木なので地上からだと葉が見えにくいですが、奇数羽状複葉という種類の葉っぱだそうですよ」

葉には、1枚で一つの葉とカウントされる「単葉」と、葉っぱのような小葉が複数枚で一つの葉とカウントされる「複葉」というタイプがある。シオジは奇数枚で一つの葉っぱにカウントされるから奇数複葉。さらに、羽のように対になって並んでいるから、「奇数羽状複葉」という分類に入るのだという。

「シオジって、初めて見たなあ。サワグルミの木の葉と似ていますね」

探検部メンバーで渓流に詳しいカメラマン氏がファインダーをのぞいて言った。

丸木橋のそばの平らな場所にあるシオジ林。シオジは小菅村の渓流の周辺で見られる、渓畔林の代表的な木だ。
シオジの葉。葉が羽のように対になっており、奇数枚で一つの葉としてカウントされる、奇数羽状複葉に分類される。
ヤマメが棲む雄滝の清流

丸木橋を渡ってさらに歩く。水音が大きくなって来たなと思った頃、滝が現れた。雄滝だ。大岩二股に割れた水の流れは純白の糸の束のような姿で、苔むした崖を滑り降りてゆく。

源流域の上流部にある雄滝。水は苔むした崖を滑り降りながら真っ白な水しぶきを上げ、空気にひんやりとした湿り気をもたらす

「あ、魚がいる」

滝見台から川面を見つめていたメンバーが指をさす。地元の方によると、このあたりにはヤマメもイワナもいるという。

村役場などがある町の中心部より、ここはずいぶん涼しい。役場の標高は630mだが、ここは約1000mだというから、涼しいわけだ。

川に手を浸すと、遊歩道を歩いて来た身にはひんやりとして気持ちいい。水温を測ってみると、11.2℃。四月にもう少し下流で測った時は9℃。季節は確実に夏に向かっているのだ。

東京が大雨だったこの日、小菅村は晴れ。小菅川上流の水温を計ると、11.2℃と、四月に訪れた時より2℃ほど上がっていた。

そういえば、四月に来た時は、鹿に食べられたのか、幹の皮がほとんど剥がされてしまった木を見かけた。あの木はどうなっているだろう。歩きながら探すと、あった! 前回訪れた時は皮を剥がされた直後だったのか、真っ白い木肌が見えていた木は、黒ずんでいた。しかも、この木だけ葉っぱは一枚も生えていない。じきに倒れるだろうと見られているが、それでも足を踏ん張るように立っている姿はいじらしく、愛おしい。

四月に訪れた時は鹿に食べられた直後だったのか、幹の皮を大きく剥がされ、真っ白な木肌が見えていた木(左)。六月に再訪すると、黒ずんでやせ細っていたが、同じ場所に佇んでいた。

森を出て町へ降りると、途端に暑くなった。この日、小菅村の森を歩いていたのは、私たち探検部だけではなかったらしい。森から戻ったばかりの東京農業大学の菅原泉教授にお会いした。小菅村の森林で長年調査を行って来た菅原教授は、こんなことを教えてくれた。

「小菅村の渓畔林は、人為的な作用があまり入っていないのが大きな魅力ですね。普通、昔の林道を作る時は川沿いの平らなところに作るものですが、ここは東京都の水源林ですので、関係者の見識が高いんですね。川沿いに林道がないんです。また、人の手で森を守ってきたからこそ、大雨が降っても、水位が急に上昇しないのも、この地域の特徴なんです」

長年携わってきた小菅村の自然について教えてくださった東京農業大学地域環境科学部森林総合科学科造林学研究室の菅原泉教授

言われてみれば、源流域のそばには車が通れるような道路はない。あのきれいな風景は、自分の足で歩いて行ったからこそのご褒美。次はどんなご褒美に会えるだろうか。