第24回ダイワグレマスターズ2016 全国決勝大会観戦リポート
終了10分前のミラクルヒットで、徳島の福原健選手が初優勝!
番狂わせ続出! 低水温に苦しめられた「予選リーグ」
25日に行われた予選リーグは、4人1組のグループで1試合2時間×3試合を戦う総当たり形式。25cm以上のグレ5尾の総重量で勝敗を決定する。サッカーのグループリーグと同形式で、勝者は勝ち点3点、引き分けは釣課のある場合は2点、釣果のない場合は1点が与えられ、グループ内で最も勝ち点の多い選手が準決勝へ勝ち進むことができる。
試合前、大会競技委員長の鵜澤政則さんに話を聞くと、「2月の串本は例年調子がよく、このところ食いが落ちていたものの3日前くらいから食いがよくなってきました。とはいえ、5尾のリミットを揃えるのはかなり厳しいと思います。2~3尾の勝負になるんじゃないですかねぇ」と予想していた。しかし、いざ試合が始まると、その予想をはるかに上回る厳しい釣況で、0対0の試合が続出する大波乱の展開になってしまった。
それまで16℃台で安定していた水温が、この日の早朝は14.5℃まで下がった為か、魚の活性が極端に低下。アタリがほとんどなく、たまに掛かるとサンノジやカワハギといった他魚といった具合で、1尾のグレが釣れるか釣れないかで勝敗が決まる、非常にタフな試合がほとんどだった。
激戦が予想された第4グループも、第3試合の直接対決を待たずして、田中・山元の両選手の敗退が決定。大本命同士の対戦が消化試合になってしまう予想だにしない展開のうえに、その試合で田中選手が釣った5尾3,358gが他の選手の3試合分の釣果を上回るという、なんとも皮肉な結果になってしまった。
そんな大波乱の第4グループを制したのは、直接対決で土を付け、早々に2人のビッグネームをレースから引きずり下ろした川村選手。第1グループからはタフな状況のなか、全試合で釣果を挙げた池田選手が勝ち抜け。第1、第2試合とも全員釣果なしという、背筋の凍るような試合が続いた第2グループは、藤田選手が昨年度3位の意地を見せ、第3試合で2尾1,578gの釣果を上げてリーグ戦を突破。第3グループからは全国大会初出場の福原健選手が準決勝へと駒を進めた。
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午前5時30分、渡船の出る出雲港に集結し、試合で使用するコマセを作る選手たち。冷え込みは厳しかったが海は凪ぎ、コンディション的にはますまずかと思われたが……。 |
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出航前、出雲港に設置された大会本部前で、鵜澤政則競技委員長による補足説明が行われた。 |
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普段は精密機械のようにグレを釣り上げる名人・山元八郎選手だが、この日は大苦戦。予選第1試合は釣果がなく、続く第2試合もノーフィッシュに終わり、第3試合を待たずして予選敗退が決定……。 |
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前年度チャンピオンの田中貴選手も第1試合は釣果なし。第2試合の終了前にようやく本命を上げたが、時すでに遅し。対戦相手の渡部選手4尾を上げており、早くも2敗目を喫してしまった。 |
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午後4時。予選の3試合が終了し、選手たちが帰港。港に設けられた検量所に釣果を持ち込んだが、釣果なしの対戦も目立つ厳しい状況だった。 |
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予選リーグで選手たち釣ったグレは地元特別養護老人ホーム「にしき園」に寄贈。にしき園の和田利文理事長にも中夜祭にご参加いただき、当日の釣果を手渡した。 |
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そして、ドラマは起こった……。「準決勝」&「決勝戦」
急激な水温低下で予想を上回る厳しい展開となった予選リーグ。翌朝、その原因を審判長を務める地元の谷垣泰司さんに尋ねた。
「大会前は水温が16℃台で安定していて、数日前は2桁釣果も見られました。ところが黒潮が沖へ離れてしまったうえに、大会直前に大雨が降って古座川のダムが放水したこともあって、昨日は14℃台まで水温がガタッと落ちたんです。でも、3回戦の終わりには16.5℃まで戻りましたから、昨日よりはよいコンディションになると思うんですが、水温の変動が激しすぎますから、前半は相当苦労するかもしれませんね」
その予想は、残念ながら的中してしまう。
準決勝は池田選手と川村選手、藤田選手と福原選手の対戦となったが、両組とも全員釣果なし。規定により、予選リーグの勝ち点が多い川村選手と福原選手が決勝進出となった。
決勝戦の舞台は「双子の子」。前日、田中貴選手が予選リーグ最高釣果をマークした磯である。しかし、この磯も厳しい状況であることに変わりはなかった。双子の子の向かいにある「双子の親」から他の選手たちが見守るなか、なんとか1尾を釣ろうと手を尽くしたが、川村・福原両選手とも釣果なしで前半戦を終了。釣座を交替した後半戦、ようやく二人の竿が曲がるようになったがいずれもサンノジやウマヅラハギといった他魚で、グレの気配は感じられないまま時間だけが過ぎていった。
ところが、ドラマは起こった。終了10分前、福原選手が竿を曲げる。最初は他魚かと思われたが、やり取りの竿の動きからすると本命の様子。周囲がざわつくなか、伸ばしたタモに収まったのは、サイズは30cm台前半だったが、その姿はまさしくグレ。その瞬間、「オオーッ!」というどよめきとともに、拍手が沸き起こった。
その後は両者とも釣果なく、値千金の1尾を釣った福原選手が全国大会初出場、初優勝を成し遂げた。
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予選リーグを勝ち上がり、準決勝へと駒を進めた4選手。これから決勝進出をかけた熱い闘いが始まる! はずだったのだが……。 |
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前年度ベスト4のシード選手の中で唯一生き残った藤田選手は初出場の福原選手と対戦。前回、田中選手と対戦し、釣果なしで敗れた「アシカ」が舞台だけに雪辱を晴らしたかったが、今回は両者釣果なし。予選リーグの勝ち点が上回る福原選手が決勝への切符を手にした。 |
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準決勝は2試合とも釣果なし。規定により予選の勝ち点が対戦者に勝った川村選手と福原選手が、決勝で対戦することになった。 |
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決勝戦を行う「双子の子」の目の前にある「双子の親」から対戦を見守る選手たち。ちなみに双子の親は前年度の決勝戦の舞台となった磯である。 |
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決勝戦後半、ようやく竿を曲げたものの、本命とは明らかに異なる引きに思わず苦笑する川村選手。 |
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試合終了10分前、タカベなどのエサ取りがアタり始めた福原選手の仕掛けに、ついにグレが食ってきた。文字通り値千金の一尾に「手が震えました」という福原選手。そのまま終了時刻を迎え、グレマスターズ2016優勝の栄誉を手に入れた。 |
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左から2位の川村選手、優勝の福原選手、3位の池田選手、藤田選手。この4選手には次回グレマスターズ2017全国決勝大会へのシード権が付与される。 |
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表彰式の後に行われたマスターズ恒例の胴上げ。屈強な選手たちの手により、大柄な福原選手も笑顔で宙を舞った。 |
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第24回 ダイワ グレマスターズ2016 全国大会決勝
優勝 福原健選手のコメント
「釣果なしの場合は、予選リーグの勝ち点が上の川村さんが勝ち。自分は準優勝かなと諦めてたんですが、最後にこんな展開になるとは……。あの1匹には正直、手が震えました。やっぱり、釣りは最後まで諦めないことが大事なんだと、つくづく思いましたね。諦めてましたけど(笑)。釣り方は、竿1本から1本半のタナを半遊動仕掛けで丁寧に釣っていく、ごくごく基本的なウキフカセで、特別なことはやっていません。ただ、1-0で勝負が決まるような状況で、バラシはもってのほかですから、グレの喉元まで極力ハリをのみ込ませるよう意識して合わせました。基本的な釣りを信じて続けたのがいい結果に繋がったのかもしれません」
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