池田 翔悟 池田 翔悟

磯フィールドテスター

ISO FIELD TESTER

池田 翔悟

Shogo Ikeda

池田 翔悟

1990年7月29日 大阪府在住
関西エリア中心に輝かしい大会成績を誇る。2022年4月に開催されたグレマスターズスタイルでも並み居る強豪選手を破り優勝を成し遂げた。SFA出身

SPECIAL INTERVIEW

スペシャルインタビュー

“好”動力で突き進む人生のJourney

釣りたい衝動と成長欲で人生を動かしてきた、
磯の冒険者が生み出すチャレンジの空気感。

池田 翔悟

負けず嫌いと“好”動力

池田 翔悟

大人にも勝ちたいと願った負けず嫌いの出発点と、
釣りたい衝動で和歌山への移住を決めた20代。

「大人にも負けたくない」。子供の頃から僕はずっと負けず嫌いでした。この性格の原点は、屈強な父の存在が大きいと思います。父は数年前に亡くなってしまったのですが、スポーツをずっとやってきた人で体格も良く、ベンチプレスで120㎏を上げていた全盛期の僕でも勝てる気がしないくらいの最強の男でした。「いつかこの人に勝ちたい」とデッカい背中を追い続けてきた幼少期が原点にあるからこそ、学生時代は陸上競技でずっと上を目指してきましたし、自分よりも強い相手に勝ちたいと自然に思える性格に育った気がします。その甲斐もあり、1500m走の大阪の競技大会で1位になったこともあります。釣りを始めたのも釣り好きの父の影響です。初めてグレを釣ったのは小学校6年生の時でした。小さなコッパグレだったのですが、釣れた瞬間の喜びは今でも鮮明に覚えています。その地磯には他にも大人の釣り人がいて、釣った僕を見て「兄ちゃんすごいなぁ!名人ちゃうか?」と本気で褒めてくれたんです。「大人にも勝てた!」という達成感はいまだに忘れられず、あの瞬間に僕の中の釣り師のスイッチが入ったのかもしれません。それ以来、隙さえあれば釣りのことばかり考えるようになりましたね。
釣りが好きすぎて和歌山に住んでいた時期もあります。高校を卒業した後、毎週のように地元大阪から和歌山へ釣りに出かけていたので、「いっそのこと和歌山に住むか!」と思い立ち、20歳の頃に和歌山への移住を決めました。やりたくなったらとりあえず行動したくなる性分なんです。好きで突き動かされる“好”動力とでも言うんですかね。釣具屋で働きながら和歌山に2年ほど住み、釣り漬けの日々を送りました。釣りたい時にいつでも釣りに行けるのって、最高に幸せですよ! 仕事が終わって夕方になると、竿とバッカンだけ持って数分で堤防ですからね。磯についているアオサを鈎につけてエサ代0円でグレを狙うのですが、これがオキアミよりもよく釣れるんですよ(笑)。

  • 池田 翔悟

    初めてグレを釣った時の思い出は魚拓で保管。タックルはDAIWA「早春」で、お年玉を貯めて購入した当時の池田少年の宝物だった。

  • 池田 翔悟

    釣りたい気持ちに駆られて移住した和歌山は第二の故郷。人並み外れたフットワークの軽さは池田のストロングポイントのひとつだ。

仕上がりからの逆算力

池田 翔悟

海の中も天井の裏も、3Dで想像する空間認識能力で見る。
腕を磨くことを楽しめる性分が、成長を支えた。

テスターとして活動する一方で、普段は空調設備の仕事をしています。店舗や大型施設に大型エアコンを取り付けるのが主な業務です。空調設備の仕事には、釣りとリンクする部分が実はたくさんあります。海の中を立面図のように3Dで想像しながら魚を狙うように、空調工事でも見えない天井裏や壁裏の構造を想像しながら配管を通していくので、空間認識能力を駆使するという意味ではとても近いものがあるんです。
空調工事の現場では、銅管という金属の管を使うことが多く、曲げたりカットしたりするのに特殊な工具や手法を用います。これがなかなか難しくて……。室内機と室外機をつないで冷媒ガスを通す冷媒配管を曲げる際には、細かい寸法を電卓で計算し、縦・横・奥行きで3D図面をイメージして曲げていきます。とても神経を使う難しい作業なのですが、この冷媒配管を触っている時が一番面白いんですよね。
釣りの世界も空調職人の世界も、師匠の背中を見て技を習得する点ではよく似ています。僕は親方を含めて3人体制の会社で育ったので、駆け出し当初はじっくり作業内容について質問する余裕もなく、親方の作業を目で見て学ぶしかありませんでした。聞けるのは作業の帰りの車の中。そこで親方に「冷媒配管の曲げ方のコツを教えてください!」と教えを請い、それをすぐに実践したくて、事務所に帰ってから倉庫でひとりで溶接の練習をしていましたね。僕、できないことがあると、何でもできるようになりたくなる性分なんです。これは釣りにも言えることで、20代の頃は「今日は普段あまり使わない仕掛けだけで釣ってみよう」と自分に縛りをかけて釣ることで、引き出しを増やすチャレンジをよくしていました。僕にとって「腕を磨くこと」自体が、楽しくて仕方ないんです。

  • 池田 翔悟

    「見えない部分をいかに美しく仕上げるか」が最大の醍醐味だと語る池田。どんな現場でも自分の作品だというプライドをもって臨む。

  • 池田 翔悟

    空調の仕事は専門的な機械や工具を扱うことも多い。業務用空調の室外機はサイズも大きく、設置や整備には力も必要だ。働いているうちに自然と腕っぷしも強くなった。

チャレンジの先に描く景色

池田 翔悟

好奇心を掻き立てられるその先へ。
憧れに近づくために、自然と対峙する冒険家の挑戦は続く。

フカセ釣りとともに、今はサクラマス釣りの腕も磨いています。シーズン中は暇さえあれば、大阪から富山まで5~6時間かけてサクラマスを狙いに行きます。サクラマスを釣る時だけは、首からアクションカメラをぶら下げて釣ります。
それは「いつどこで、どういう天候で、どんなアクションをした時にヒットしたか」を記録しておきたいからなんです。
そして僕は、スプーンではなく、絶対にミノーで釣りたい。自分の意思でアクションを入れて釣るほうが「釣れたではなく釣った」と思えるからです。ただ釣るのではなく、「いかに自分の理想のなかでやりきるか」というプロセスを大事にしたい。僕、こだわりが強い性格なんですかね(笑)。
そういう性格も相まって、サクラマス用のルアーをイチから自作することもあります。自分の理想の泳ぎを思い描きながら設計図を引き、それに合わせて木から削り出し、エアブラシで塗装するところまですべて自分の手で作ります。個人でやっているルアービルダーさんのルアーを使うのも好きで、SNSのダイレクトメールから問い合わせて取り寄せることもあります。木材の特性を生かしたバルサ材のルアーは、流れの中でもしつこく粘り、お尻をふりながら浮かずに引ける。その動きが自分の理想なんです。ルアーひとつにもそこまでこだわるのは、釣り方からタックルまで、すべてにおいて自分の理想をとことん追求して「これでどうだ!」という気持ちで難敵に挑んだほうが、釣れた時の達成感が大きくなるし、何より楽しいんですよね。
小学生の時にフカセ釣りに惹かれたのも、大人になってからサクラマスにハマったのも、いま思えば「簡単に釣れない面白さ」を感じたからなのかなと。到達が困難で険しい道ほど、チャレンジしてみたくなる。誰もやらないことほど、燃える。これからもそんな自らの好奇心のコンパスに正直に、ワクワクするような空気感を大切にしながら「釣りの冒険」を続けていきます。

  • 池田 翔悟

    ルアーを作る際は、理想の泳ぎを想像しながら設計図を描くのが一番楽しいと池田は言う。図面を細かく引けるのも、普段から図面と向き合う空調職人ならではだ。

  • 池田 翔悟

    空調職人としてもっともっと腕を磨いていきたいと語るその想いの先には、いつか会社をつくって仲間を増やしたいという夢もある。