大野 ゆうき 大野 ゆうき

ソルトウォーター ショア フィールドテスター

SALTWATER SHORE FIELD TESTER

ショア

大野 ゆうき

Yuki Ono

大野 ゆうき

1980年9月5日 東京都在住
東京湾奥をホームに、ルアーのレンジ・スピード・アクションの相関でパターンを探る「Match・The・Bite」ゲームを追求するアングラー。独自の理論に加え、ズバ抜けた遠投力とピンポイント撃ち能力を持っており、狙ったシーバスを高確率で掛ける東京湾のキングである。

SPECIAL INTERVIEW

スペシャルインタビュー

泰然自若の向こう側。

シーバス界のトッププレイヤーが積み上げてきた
ゆとりの裏側にある努力と考察と人間味。

大野 ゆうき

釣りの原点とプロへの一歩

大野 ゆうき

1994年6月18日に幕開けたシーバスマンのストーリー。
母譲りの釣り心と、師匠の言葉を胸にプロとして突き進む。

母が北海道釧路出身で魚を釣るのが大好きな人ということもあって、その影響で僕も釣りを始めました。4~5歳の頃だったと思います。釣りに夢中になる母を見て、「釣りは楽しいものなんだ!」と当時から思い込んでいました。シーバス釣りを始めたのは13歳の時。友達から「ルアーでシーバスが釣れるらしいぜ!」と誘われて始めるも、当初は20回くらいの釣行でも釣れず…。そして、1994年6月18日夜。7cmのルアーで44cmのシーバスを初めて釣り、その数日後に荒川で連続して5匹くらい釣れたこともあって、そこからどんどんハマっていきました。
僕は大学卒業後、釣具メーカーに入ることと釣りのプロになる2つの選択肢を前にして、後者の道を選びました。プロとして歩み出せたのは、DAIWAテスターでシーバス界のカリスマとも称される村岡昌憲さんの影響がとても大きいです。村岡さんがご自身のWebサイトで後継者となるシーバスアングラーを募集していて、それに応募したんです。「釣具メーカーで働く夢」を選べばいろんな仕事はできるけれど、釣りをする時間は減ってしまう。「釣りのプロへの道」を選べば、未知数ではあるけれど、自分が釣ることでシーバス界をもっと面白くすることだってできるかもしれない。村岡さんから面接時に言われた「失敗しても責任はとりません」という言葉で覚悟が決まったし、自分で切り拓くんだという気持ちがより一層強くなりました。強い言葉だったけれど、村岡さんなりの叱咤激励だったのかなと勝手に思っています。釣りを教えてもらったことほとんどないですけど(笑)。

  • 大野 ゆうき

    ルアーは疑似餌である以上、「魚に食わせること」が一番重要だと語る大野。より良いルアーへの思いは尽きない。

  • 大野 ゆうき

    大野と言えば鰻好きで有名。全国各地のロケで、うな重を食べ歩くのも楽しみのひとつ。

受け継ぐものと引き継ぐもの

大野 ゆうき

横綱の祖父から受け継いだポテンシャルと
親として子どもたちに引き継いでいきたい釣りの魅力。

僕のじいさんは元力士の照國関として横綱まで昇りつめた人です。僕が生まれた時にはもう亡くなっていたのですが、相撲業界の人やメディアを通してじいさんの人柄について見聞きすることも多く、ある意味で横綱っぽくない、温厚で慎重で物腰のやわらかい人間だったそうです。相撲においては、いくつかの最年少記録を打ち立て、通算成績でも安定して高い勝率を残したようで、もし生きていたら結果を出し続ける秘訣などを聞いてみたいなと思いますね。村岡さんからはよく、僕がちょっと人より力が強かったり遠投力があったりすると「さすが横綱の孫」みたいにネタにされますが、どうなんでしょう(笑)。
僕も親になり、後世に残していけるものが何かないかと考えた時に、やっぱり自分には子どもたちに釣りの面白さを伝えていくことしかないなと思いました。先日、子どもたちとクロダイを狙って釣りに行ったのですが、「ルアーを落としてから7秒待つんだよ」とその理由と釣り方を教えてあげると、まだ幼いのにちゃんと理解してしっかり釣るんですよね。結局たくさん釣るたびに持って帰るって言い出して(笑)。「待て待て、それは無理だ。1、2匹食べられる分ならいいよ」ってことで、持って帰った魚を僕が料理してみんなで食べました。東京の魚でも鱗をとってニンニクチップを多めにしてバター焼きにして食べると普通に美味しいんです。釣りを通して、人生を楽しむことや、目標達成のために考えるプロセスなど、何かひとつでも学んでくれたらうれしいですね。

  • 大野 ゆうき

    帰郷しようとする照國関は師匠の幡瀬川関にこの両国橋で引き留められた。人生の分岐点でここから快進撃は始まる。

  • 大野 ゆうき

    大野が巡る都内のシーバススポットの中には、屋形船など江戸の情緒が残る場所も。

シーバス釣りの可能性

大野 ゆうき

シーバスタックルで楽しめる釣りをもっと増やしたい。
自分のモノサシで釣れる楽しみを広げたい。

僕が今取り組んでいるのは、シーバスタックルで楽しめる魚の種類を広げることです。シーバスタックルで狙える魚は日本だけでなく海外を含めると意外と多く存在していて、東京の湾奥に棲むクロダイなら、シーバスタックルのままで、ルアーと釣り方を変えるだけで狙うことができます。ルアーで釣れるハイシーズンがシーバスとおもいっきり被っていないのもバランス的にいいんですよね。
あとは、シーバスを釣る面白さをもっと多くの人に発信していくこと。特に東京の湾奥は、再開発などで頻繁に工事しているし、最近では自然災害で地形そのものが変わることもある。環境の変化が激しいです。だからこそ、釣れる最適解も進化し続けるし、言い換えれば、誰にでもチャンスがある。それもシーバス釣りの面白さのひとつです。僕だって初めから釣れたわけではありません。中学時代には釣り日誌をつけていた時期もありましたが、釣れた場所に行ってまた同じ釣り方をしても釣れないことに気付き、それ以降は「釣れた条件」を写真ととも記憶するだけにしました。あとはそれをどう応用できるか。僕の場合は、「レンジ×アクション×スピード」という自分のモノサシのなかで再現するように心がけていますが、正解はひとつじゃないですからね。
自分なりのメソッドを持っていると、釣り場での余裕につながると思っています。「余裕を持てる人になったほうがいい。釣りも仕事も。」と村岡さんから言われたことがあります。何事に対しても誰でもうまくいかないと焦るし、焦ると普段できていることも簡単にミスしてしまいがちです。焦っているアングラーって小さく見えちゃうし、あまりカッコよくないじゃないですか。余裕っていうのは「すかしている感じ」とかではなく、考えられること、できることをすべて尽くしたうえで魚に立ち向かう「どしっとした姿勢」だと思うんです。こんな言い方をするとまた、「さすが横綱の孫」とか言われそうですけどね(笑)。

  • 大野 ゆうき

    シーバスタックルの新たな可能性を開拓することは、新たな楽しみや新たなテクニックを生むことにもつながる。

  • 大野 ゆうき

    飛距離も的確なキャストも、日々の釣行の中でしか養えないと大野は言う。高い技術は弛まぬ努力の証でもある。