有岡 只祐 有岡 只祐

鮎フィールドテスター

AYU FIELD TESTER

有岡 只祐

Tadasuke Arioka

有岡 只祐

1975年12月20日 高知県在住
明るいキャラクターでも人気のオールラウンドアングラー。仁淀川、奈半利川、安田川、四万十川など地元河川を中心に活躍し、竿をベタに寝かせた引き釣りから45度前後のゼロテンションの釣りを得意とする。近年ではシーズン終盤の尺鮎釣りにも注力しており、四万十川にいると言われている36cmの鮎を釣るべく勤しむ。

SPECIAL INTERVIEW

スペシャルインタビュー

自然が育む「前向き力」。

マスターズを制した鮎釣り師を突き動かすのは、
茄子農家として培った自然のエナジー。

有岡 只祐

自然とともに育った幼少期

有岡 只祐

釣りは自然の一部。
日本一日照時間が長い土地で育んできた「生きる力」。

川・海・山がすべて5分圏内にある自然環境で僕は育ちました。僕が暮らす高知県は日本一日照時間が長いことで有名で、自然に恵まれた素晴らしい場所です。春になったら海に昆布を採りに行き、夏になったら川で魚を捕まえ、冬になったら山へ自然薯を掘りに行く。そんなふうに自然と共生するスタイルでずっと生きてきました。子供の頃は川魚をモリで突いて捕まえたり、水中メガネで覗いて手づかみで捕まえたりして遊んでいたので、水中で魚がどのように泳ぐのか、そうした知識を自然と身につけることができました。僕にとって釣りは趣味というよりは、狩猟のひとつですね。子供の頃から「食べるために釣る」ということが多かったので、もはや生活の一部なんです。
初めて鮎の友釣りをしたのは小学4年生。近所の大人たちの多くが普通に友釣りをしていて、幼い頃から「早く自分もやってみたい!」と思っていました。友釣りをやり始めて40年近くなりますが、やっぱりこの釣りの面白さは格別です。一年たりとも友釣りをしなかった年はないですし、やめられない釣りですね。鮎釣りには解禁日・禁漁日という「始まりと終わり」が明確にあるので、その分待ち遠しい期間が長い釣りでもあるんです。僕が一年のうちで一番テンションが上がるのは、鮎釣りが解禁になる直前の一週間。「今年はどうやって釣ろうかな」とじっくり妄想するのが、心待ちにしていた分、最高に楽しいんです。

  • 有岡 只祐

    近くを流れる安田川は鮎釣りの聖地でもある。物心ついた頃から、鮎釣りは生活の一部だった。

  • 有岡 只祐

    鮎マスターズが始まる1か月前から、朝4時半起きにして早朝からの戦いに徐々に体を慣らしていく。

茄子作りから得た財産

有岡 只祐

茄子作りで身に着けた「五感というセンサー」が
鮎釣りの感性をさらに高める。

僕は今、茄子農家を営んでいます。茄子を育てる農作業は8月以外、ほぼ一年を通して行っています。僕の茄子作りにおける信条は3つあります。1つ目は「信頼=できるだけ農薬を使わない」こと。ビニールハウス内で胡麻を栽培していて、その胡麻につく虫が茄子の害虫を食べてくれることでなるべく農薬を使わずに育てています。2つ目は「鮮度=少しでも早くお届けする」こと。1日で1cm近く成長する茄子のサイズとツヤを一つずつチェックし、食べ頃になったものを収穫して即日出荷することにこだわっています。3つ目は「美しさ=こまめな水やりと温度管理を徹底する」こと。ツヤと味を維持するために、毎日こまめに茄子の生育環境と健康状態を確認しています。農業って、五感を使うことが重要なんです。適度に水が行き届いているか土の湿り具合を「目」で確認する。空調設備に異変が出ていないか「耳」を研ぎ澄ます。茄子に影響のある気温や湿度になっていないか「肌」で感知する。100個のことをやらないといけない仕事だから「百姓」と書くと昔聞いたことがありますが、農業は本当にやることが多い…。作物は工業製品じゃないので、一度種を植えたら途中で製造を止めるなどできないし、土日も有給休暇も当然ありません。正直ハードですが、茄子作りで得た経験が鮎釣りの肥やしになっていることも多いんです。暑さに強くなり、体力がついたこと。環境の変化を感じ取るセンサーが身についたこと。自然の変化に合わせて臨機応変に対処法を考えられるようになったこと。そうした茄子作りで養ってきた「自然適応力」が、鮎マスターズでの好成績にもつながっているかもしれないと思っています。

  • 有岡 只祐

    茄子栽培は家族みんなで力を合わせて営んでいる。茄子のほかに稲も育てるなど、まさに自給自足の生き方だ。

  • 有岡 只祐

    夏場は1日に5~6回の水やりが必要に。12000株程ある茄子に均等に水が行き渡っているかのチェックは一苦労。

鮎釣りと農業の未来図

有岡 只祐

名人の一言から動き出した社会貢献の志。
鮎釣りと茄子作り、その両方の未来を育てる。

20代の頃、DAIWA鮎テスターの村田満師匠に鮎釣りの試合でお会いしたことがありました。当時の僕は血気盛んで、「村田さんを倒せば日本一になれる!」と、勝手に思い込んでいました。そんな僕に、村田さんは、こんな言葉をかけてくれました。「高知で君は凄くても外に出たら他にも凄い奴はいっぱいおる。もっと視野を広げ、世の中に向けて何ができるかを考えなあかん」。鼻っ柱を折られた気分でした。その言葉をきっかけに「何か社会に貢献できることはないか」と常に考えるようになり、今は「鮎釣りの普及」と「就農者の支援」に力を入れ始めています。
鮎釣りの普及とは、ルアーで鮎を釣る「アユイング」でも、その魅力を広めること。伝統と格式のある友釣りをされている方からすれば、「あんなの鮎釣りじゃない」と思われるかもしれません。でも時代は変わったし、敷居を下げて鮎釣り人口を増やすことは友釣りを続けていくためにも重要なことなんです。アユイングのタックルは、比較的、安価でそろえられますし、この間、小学生が鮎を釣っている風景を見て胸が熱くなりました。そんな光景が日本中で見られるようになり、いつか彼らが友釣りに興味をもち、トーナメントにも出てくるような未来に繋がれば素敵だなと思っています。年々減り続ける就農者の支援については、農業をセカンドキャリアにできるシステム作りと、若い就農者に向けた茄子作りの勉強会などの活動を進めています。鮎釣りも茄子作りも、両方を本気でやる。危機感や不安はあるけれど、だからこそポジティブに攻めるしかないと思っています。前しか見ない。振り向いたらダメ。失敗も笑うくらいがちょうどいい。自然さえあれば、生きていけるからね。

  • 有岡 只祐

    DAIWA総合カタログのトップページに鮎竿が返り咲く日を目指し、竿の開発と業界の発展に貢献し続ける。

  • 有岡 只祐

    育てた茄子は「顔の見える野菜」として首都圏のイトーヨーカドーに卸される。「ナス天が美味しい」と好評だ。