カツオ
海のブルーインパルスチーム
カツオがアジを追って捕食しているときに腹側にカツオ特有の縞模様が出ていたのだ。図鑑などには、腹部の縦じまは死斑であり、生きているときはなく、死ぬと現れると書いてある。だが、実際には生きているときにも現れる、その縞模様。
つい先日、カツオの一本釣りの船に乗った。いわゆる土佐に代表されるカツオ漁の船である。
船首から左舷側にかけて散水機が装備され、中央にカタクチイワシの生簀がある。また、船首左舷側には小さな生簀が立ち上がり、エサを撒く人が作業しやすいようになっていた。散水機は、漁場で海面に海水を撒き、シャーッという音と白い小さな気泡があたかも小魚が逃げ惑う演出をするのだという。きれいな朝焼けを見ながら港を出港し、しばらくすると鳥山を発見。その場に近づくと、真っ黒い塊が海面から奇妙に盛り上がり、そこに鳥は突っ込むは、カツオははねるは、サメが背ビレをだすはでスゴイ状況になっていた。黒い塊はカタクチイワシの群れ。カツオやサメに追われて群れがさらに密集して塊りとなり、海面で行き場を失っていたのだ。去年、イギリスのBBCが発表したドキュメンタリー映画・ディープブルーのワンシーンのような状況。船は散水を始め、生きたカタクチイワシを撒いて操業開始。カツオが面白いように揚がり、カツオがバイブレーターのように甲板を尾でたたく。釣り上げられて宙に飛んだカツオの魚体が甲板に落ち、ドスン、バチバチと騒々しい音の世界となった。しかし、ほんのわずかな時間でこの荒喰いは終わった。カツオの喰いが止まると、船をその黒い塊の脇につけ、そのカタクチイワシの群れを玉アミですくって生簀に入れた。3回もすくうと、さすがにカタクチイワシもカツオたちの呪縛がなくなったことに気づいたのか、あわてて逃げ去っていった。新しく手に入れたこのカタクチイワシも、次の漁場で撒くつもりなのだろう。
集団で襲い、スピードで捕食する

カツオの縞は死んだら出るだけではなかった
このとき面白いことに気がついた。カツオがアジを追って捕食しているときに腹側にカツオ特有の縞模様が出ていたのだ。図鑑などには、腹部の縦じまは死斑であり、生きているときはなく、死ぬと現れると書いてある。だが、実際には生きているときにも現れる、その縞模様。実際釣ってみるとわかるのだが、釣った直後のバタバタと暴れているカツオにも、この縞模様は現れる。ただ死んでしまったときの縞模様はかなり濃い黒色だが、捕食したり釣りたてのものは、やや濃い目のグレーといった感じだ。死んだときよりはかなり薄いが、おそらく興奮すると現れる模様なのだろう。カツオが追い回してアジ玉はちりちりバラバラになった。あたりにはアジの鱗がきらきらとしている。視界が開け、そのアジの鱗の花吹雪が舞うような情景は美しいのだが、そのいきさつをすべて目撃したボクとしては、この貴重なシーンを目撃できた喜びと、弱肉強食の大自然の姿を目の当たりにして、一種のモノ悲しさを感じずにいられなかった。カツオの捕食も瞬間湯沸かし器的に起こり、その行動はあっという間に終わる。カツオはいつまでもチマチマと捕食するのではなく、「いっせいのせっ!」で始まって終わる。まさにボイルという言葉があてはまる。そして、捕食し終わったカツオたちは、編隊を組みなおしてゆったりと辺りを旋回し、姿を消していった。まさに、海中のブルーインパルス航空ショーは終わった。
※釣魚考撮より移設

