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2021.04

ファインダーを通して

“フォトグラファー藤巻翔の世界観に迫るインタビュー

プロデビューは中学生。

ダイナミックな構図や独特の空気感漂う写真で、観る人を魅了するフォトグラファー藤巻翔さん。藤巻さんの作品はどのようにして生まれているのか、撮影に掻き立てる原動力とは何なのか、ファインダーを通して生み出される世界へ迫ります。

藤巻さんのお父さんは、長野県でスキーの競技写真を撮影するプロのフォトグラファーでした。その影響もあり中学生の頃から大きな望遠レンズ付きのカメラで撮影をしていたそうです。

「当時は、誰も中学生が撮影したと思わないで自分が撮影したプリント写真に喜んでくれました。子ども心にすごく嬉しかったことを覚えています。父は写真に関しては職人気質で、手取り足取り教えるタイプではなかったので、本当に見よう見まねで現場で撮影技術を学んでいましたね」

人の気持ちを撮りたい。

高校卒業後、昼はスタジオで働き、夜は写真の専門学校に通い、スタジオカメラマンを目指していたのですが、その途中で、スタジオの狭い世界だけでは息が詰まってきて、広い自然の中で活動するアウトドアの撮影に変えたと語る藤巻さん。

「アウトドアといっても自然だけを撮りたいわけではないんです。撮りたいのは自然の中にいる人なんです。どんなに小さくても人は入れたいんです」

藤巻さんが今まで出会った中で一番衝撃を受けた釣り人は、ニュージーランドのエクストリーム・アングラーだそうです。

「日本では危険を避け、安全な場所で釣りをすることが普通ですが、その人は完全にアスリート。いかにスリリングにアクロバティックな釣りをし、魚をリリースするかにこだわっていました。自分には厳しくても、魚にはやさしすぎるほどやさしく接するのです。魚をリリースするために一緒に水の中に入っていくようなそんな魅力的な人でした」

「やはり、“その人の姿を撮るのではなく、その人の気持ちを撮りたい”ですね。
“目は心の窓”と言いますが、目だけで気持ちを伝えることができる人はなかなかいないです。そんな人との出会いを求めていくことが、自分の作品を高めることにもつながるように思います。」

自然が人と人をつなげてくれる特別な時間。

人の気持ちが一番現れるのが顔です。新型コロナの影響で皆マスクをしているため、表情がわかりにくいのが残念と語る藤巻さん。新型コロナが世界を席巻する前は一年のうち5ヶ月は海外に撮影に行っていたそうです。

「6〜7割は山での撮影なんですが、撮影に行くと山は川を通して海と繋がっているって実感できるんです。プロモーションの撮影が多いんですが、今後やりたいのは自然と人のドキュメンタリーの撮影ですね」

藤巻さんは最後に“自然が人と人をつなげてくれる特別な時間がある”と語ってくれました。
「朝まずめ、夕まずめは釣り人にとって一番魚が釣れる最高の時間とよく言われますが、写真にとっても様々なものがドラマチックに見える素晴らしい時間です。他のスポーツでは被写体の人物が時間をここまでは意識してないことも多くあります。釣り人とフォトグラファーと自然と特別な時間。単に撮影をするというのではなく、人と人が特別な時間を共有し、自然がその橋渡しをしている。そんな時間を過ごせるのが、わたしにとっての#go_fishingなのかもしれません。」

取材・文/#go_fishing編集部
写真/藤巻翔