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DAIWA TECHNOLOGY
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画像ワンウェイオシレーション

魚に対して優位でありたい釣り人の心情とは

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たまには魚になって、魚の動きを想像してみるのもいいかもしれない。 広い海を悠々と泳いでいると目の前になにやら美味しそうな獲物がいる。ここがチャンスとばかりにガブリと食らいつく。ところがなんだか変だ。口の中に、いつもと違う違和感。慌てて逆方向に泳ぎだす。何かに引っ張られる。こっちは口の中に針をくわたままだ。それでも全力で泳ぐ。海の底へ、岩の陰へ……。果たして、魚には痛覚があるのか否か。針をくわえた魚が痛みを感じているかどうかは長年論争されてきた話題ではあるが、いずれにしても、針をくわえた魚が何かしらの違和感を感じ、糸を引く釣り人から逆方向に逃げる習性があることは間違いない。特に磯釣りの場合、魚が海底の岩の間に入り込むと糸が岩にこすれて切れてしまう可能性もあるし、竿がのされてしまったら竿の弾力を活かして釣り上げることは不可能だ。やはり釣り人は、常に魚に対して優位でいたい。アタリを感じたら魚が慌てて海底に逃げ込む前にすぐに竿を立て、魚とやり取りするための姿勢を保つ必要がある。それでも魚の力が強くひっぱられてしまうときは、まず糸が切れないようにローターを逆転させ糸を出して体勢を整える必要がある。今回紹介する「ワンウェイオシレーション」は、いつでも魚に対して優位でいたい磯釣りファン必携の磯釣り専用リール搭載の機能。目からウロコの発想から生まれたDAIWAオリジナルの機能である。

スプールがオシレートする常識

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スピニングリールは糸を巻き上げる際、通常、糸の巻きに偏りが出ないようにスプールが上下する(オシレートする)ようになっている。この機能があるおかげで、糸を均一に巻き上げることができる。実に機能的な仕組みだが、逆転時、つまり糸を出す際は、オシレートする必要はない。なぜなら糸が出ていくのに糸の偏りを気にする必要などないからだ。レバーブレーキをオフにして“逆転フリー”の状態にしておけば魚が強い力で糸を引いた際、糸が瞬時に出ていくわけだが、その一連の動きにスプールが上下する必要はまったくないのだ。ところが、それまでのレバーブレーキリールは正転時も逆転時もスプールは上下していた。おそらくそれは、構造上、当たり前のことだと誰もが思っていただろう。だが、本当にそれでいいのか。逆転時にスプールが上下すれば、糸が出る“逆転フリー”は当然重くなる。スプールが動くことで振動が生じ、糸を通して魚に伝わる。魚はより大きな違和感を感じ暴れ出す。魚が暴れ出してしまえば、強い力で引っ張られ、釣り人は竿を立てるスピードが遅れる。いい体勢がなかなかとれない。その間に魚は海底に逃げる。竿がのされる。糸が切れる……。釣り人はがっかりだ。まぁ、仕方がない。魚だって必死なのだから。

スプールがオシレートしない新常識へ

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しかし、釣り人の常識は常に進化を求めている。そこでDAIWAは“仕方がない”では済ませなかった。「なんとか“逆転フリー”を軽くしたい」。その想いから試行錯誤を始める。2003年頃のことだ。まずはローターに着目。内部抵抗を軽くすることを考えた。しかしローターは’90年代後半に、その素材をアルミからマグネシウムに変え、すでに軽量化が進んでいた。ゆえに程度はそこまで変わらなかった。ギアやハンドルの軽量化も試みたが、大きくは変わらない。もはや素材変更では限度がある。構造から考え直す必要があった。そしてあるとき、オシレートを切り離すというとんでもない発想が生まれる。逆転時にスプールを上下させるギアとの連結を切り離し、ローターのみを回転させようというアイデアだった。

そもそもスプールをオシレートさせることには意味がある。糸の偏りをなくすための必要な機能である。それを逆転時にはオシレートする必要はないからとはいえ、“切り離してしまおう”という発想は、なかなかのチャレンジャーといえる。もっともこれまでの取材で受けた印象からすればDAIWAらしいといえば、DAIWAらしいのだが。

そして2006年、「ワンウェイオシレーション」発表。逆転時、スプールがオシレートしないためリールのブレを最小限に抑えることができ、結果、“逆転フリー”のスピードは格段に早くなった。魚に違和感を与えないため、無駄に暴れさせることもない。さらに“逆転フリー”の性能が上がったため、魚とのやり取りの中での“一瞬の竿立て”も可能になった。これでもう、魚に主導権を与えることはない、主導権は常に釣り人のものだ。

さてここで、再び、魚の気持ちになってみる。目の前の美味しそうな獲物にガブリと食らいつく。だが、口の中に違和感を感じたときは、すでに釣り人に主導権を握られてどうにもならない。うまく突っ込んだはずなのに釣り人からのプレッシャーは変わらない。陸に挙げられた後に見た釣り人の手には「ワンウェイオシレーション」搭載のリールが見える。どうりで思い通りに逃げられなかったはずだ……。そんな魚のボヤキが聞こえてきそうな機能、それが「ワンウェイオシレーション」である。より良い進化のためなら、現状の最良と思われている構造もゼロから見直す。まさにDAIWAの意気込みが生み出した「ワンウェイオシレーション」は、これからも磯釣りファンの力強い味方であり続けるだろう。