廃棄漁網を通じて新たな付加価値を持った
アパレル製品の創造を目指す産学連携プロジェクト
BE EARTH-FRIENDLY×COLLECTION WORK HRD PROJECT
- 第3回 -
受賞作の発表
いよいよ受賞作が決定!
栄冠は誰の手に?
迎えた審査当日
各チームがプレゼンテーションを行う
1月30日、ついに審査日を迎えました。この日、1年間の授業を通して商品企画からサンプル制作までを行った学生たちは、アパレルブランド「paratrait」のファッションデザイナーとして活躍中の坂井俊太氏をはじめとする7名の審査員を前にプレゼンテーションを行いました。
各チーム10分間ずつのプレゼンテーションでは、全11チームが思いを込めて制作した作品サンプルを紹介。スライドを用い、自分たちのブランドのコンセプトや各アイテムの詳細などを懸命に伝えました。学生たちの熱のこもった説明を聞く審査員の表情も真剣そのもので、会場は張り詰めた空気に満ちていました。
そして、無事に全チームのプレゼンテーションが終了。あとは審査の結果を待つのみです。
厳正なる審査の結果
5つの賞が決定
審査を経てついに受賞作が発表されました。最優秀賞を受賞したのは「indulge(インダルジ)」。作品のクオリティはもちろん、新鮮でオリジナリティあるブランドコンセプトや、説得力あるプレゼンテーションの能力も評価されての受賞となりました。
グローブライド賞を獲得したのは「ixatch(イクサッチ)」。発表された7つのアイテムはDAIWAで商品化され、「D-VEC」で販売されることになります。
また、デザイン賞はSphene(スフェーン)、技術賞はL ∞ P (ループ)、特別賞は「Eternal Angel(エターナルエンジェル)」がそれぞれ受賞しました。
最優秀賞
indulge(インダルジ)
グローブライド賞
ixatch(イクサッチ)
デザイン賞
Sphene(スフェーン)
技術賞
L ∞ P (ループ)
特別賞
Eternal Angel(エターナルエンジェル)
審査員の講評
坂井 俊太
株式会社OBVUSE
paratrait ブランドデザイナー
デザイン賞を受賞したSphene(スフェーン)のデザインのクオリティの高さには感心させられました。また、洋服を飾るという感覚も新鮮でしたし、ばらして着られる(売れる)という部分には大きな可能性を感じました。建築でいうメタボリズムのように、ばらしたり繋げたり、変化に応じてある部分だけ交換したりというのは、とてもサステナブルなことだと思います。
また、今回みなさんのプレゼンを拝見して、昔自分がコンペに参加していたときに「こんなおじさんたちに何がわかるのか」と感じたことを思い出しました。みなさんの中にもそう思う人がいたと思います。しかし、社会に出ればどこにいってもおじさんだらけ(笑)。そういう人たちを納得させられるだけのものがなければ通用しません。だから、学生のみなさんにはジェネレーションもジェンダーも違う人にも納得させてやろうという気概を持ってもらいたいです。そうすれば就職活動もうまくいくと思います。
あとは、みなさんの世代だからこそできるデザインをしてください。デザインとは、時代に合わせて自分たちが必要とするものを更新していく作業ですから、そこを強く意識してほしいと思います。
小路 公武
グローブライド株式会社
アパレルマーケティング部 部長
アパレル責任者
どのブランドも甲乙つけ難く、審査するにあたっては非常に悩みました。そのなかで継 tsugi.(ツギ)は和服のよさを次世代に繋ぐという内容で、心惹かれました。ゴアテックスなど先進的な「洋」の素材を使いながら「和」のコンセプトで作品をつくるというのは、非常にユニークな着眼点だと思います。で、また、漁網やサステナブルというキーワードも上手に取り入れてプレゼンテーションできていたと思います。
あとは、せっかく着物をつくったのなら、できれば実際に作品を着用してプレゼンテーションをしていただければよかったと思います。そうすれば、着物ならではの雰囲気や着心地、立体感という部分がもっとわれわれに伝わったのではないでしょうか。
グローブライド賞に選ばさせていただいたixatch(イクサッチ)は、しっかりしたコンセプトと現状の把握があり、そのギャップをどう埋めていくかというストーリー性のある説明が見事で、私のなかにスッと入ってきました。どのアイテムもこだわりが感じられましたし、あとはブランドのタグもつけるというさりげない気遣いも、企業側の視点からすると好感が持てました。
染谷 京助
グローブライド株式会社
プロモーション部 部長
DAIWA 販促責任者
私は主にプロモーションという観点から評価をさせていただきました。その視点から見ると、LICÉRE(ラジュアル)の「自由でいいんだ」というコンセプトは、若いみなさんが日頃から思う、ファストファッションへのアンチテーゼが感じられて非常によかったと思います。ただ、自由というコンセプトはおそらく誰もが憧れるテーマだと思いますが、実際に商品として表現するのは非常に難しいものです。こういう部分はブランドを立ち上げるうえでとても大切なことなので、LICÉREが考える自由の本質をもっと突き詰めて表現できたら、なおよかったと思います。
特別賞のEternal Angel(エターナルエンジェル)は、「尖る」ことの大切さを思い出させてくれました。やはりブランドはこれぐらい尖っていていいと思います。むしろ、これだけ尖っていないと、これからの時代勝ち残っていけないかもしれません。次のステップとして考えてほしいのは、それをどうビジネスに落とし込むか。このアイテムが実際どれだけ売れるのか、数が出ないのであれば収益性をどう確保するか、そういったところまで考えることができれば、就職活動をするときにも評価されると思います。
内海 輝久
グローブライド株式会社
アパレルマーケティング部 課長
D-VECブランド責任者
Link’s(リンクス)はコンセプトが非常にしっかりしていると感じました。サステナブルについていろいろな考え方があるなかで、自分たち独自の概念でやっていこうという姿勢が感じられました。最近デュラビリティ(耐久性)という概念が重要視されていますが、それを長寿命化という言葉に置き換えて差別化している点は素晴らしいと思います。
最優秀賞のindulge(インダルジ)も、ジェンダーレスという一般的な言葉に「ジェンダーフリー」という独自の解釈を加えてものづくりに落とし込んでいくコンセプトワークが見事でした。デザインや仕様ももちろん大切ですが、ブランドの原点のコンセプトを一貫して通し抜けるかというのは、とても大切なことだと思います。ほかの審査員のみなさんも同様の意見で、文句なしの最優秀賞だと思います。
ウエディングドレスを制作したRegale(レガーレ)は、われわれが定義しているアップサイクルと考え方が同じで共感を持ちました。もともと手間もコストもかかっているウエディングドレスを再生するというのは、高コスパで夢のある話だと思います。服が大量につくられて大量に捨てられていくという問題の解決策にも繋がるのではないでしょうか。
松岡 智里
グローブライド株式会社
アパレルマーケティング部
D-VEC縫製担当
子供服をリバイバルしたcharm(チャーム)のアイテムどれもかわいらしく魅力的で、私自身もこういったカラフルな洋服が好きだったことを思い出しました。キラキラやフリルを大人用の服にどう落とし込むかという部分にとてもこだわっているのが感じ取れましたし、縫製面から見ても、フリルのスカートに刺し子をしている部分などは手仕事が細かく、生地売りしてほしいと思うほどかわいらしかったです。生地からつくるというところからもブランドへの愛が感じられて、とてもよかったと思います。また、襟ぐりの内側のパイピングが着たら見えないのに、脱ぐとピンクが見えるとか、デザイン性が高いワッペンとか、各所からこだわりが見て取れました。
技術賞を受賞したL∞P(ループ)は、まず女性の気持ちに寄り添うコンセプトに惹きつけられました。オールニットでつくられていますが、ニットは布帛と比べて縫うのが大変なので苦労したと思います。また、接着芯にこだわっているというのも高評価のポイントです。長く着たときに型崩れが起きたり、芯が剥がれたりすることを最初から視野に入れている点は素晴らしいと思います。
境 信杏毅
グローブライド株式会社
フィッシング営業本部
プロモーション部メディア課 課長
撮影で昨年からみなさんが制作に打ち込む姿を見ていたので、無事発表を終えることができて今は感無量です。
0 one dred(ワンドレッド)は、個人的にはこれを商品化したいと思うくらい素晴らしい作品でした。ブランドのコンセプトとプロダクトの繋がりという部分が少したりなかったかもしれません。誰もがパッと見た瞬間に理解できるというところまでコンセプトをプロダクトに落とし込むことができれば、最優秀賞も狙えたのではないかと個人的には思います。
中西 教夫
文化学園大学 服装学部
教授
学生たちが一生懸命制作に打ち込んできた姿をずっと見てきた私としては、本当に全員に賞をあげたい気持ちです。
賞に選ばれた人もそうでない人も、この授業を通して何かに集中して努力すること、こだわることを学んでくれたのではないでしょうか。そして、自分のメッセージを人にわかりやすく伝えることの難しさや大切さも理解してくれたと思います。卒業して社会に出たら、そうした部分がよりいっそう求められるようになるので、残りの学生生活でさらに成長してくれることを期待します。
受賞者の声
最優秀賞
indulge(インダルジ)
長島芽生・掛谷らき・ZHANG HANGXING・硯川星空
最初はジェンダーレスという言葉で集まった仲間でしたが、始まってみたらそれぞれジェンダーに対する思いも考えも違い、意見をまとめるのに苦労しました。でも、今はこのブランドのコンセプトについて、メンバーの誰に聞いても同じことを答えられるくらいまとまっていると思います。グループワークをやってみて、違う考えの人たちと何かをやり遂げる楽しさを感じました。
理論的なタイプと想像力を膨らませるタイプのバランスもよかったと思います。
グローブライド賞
ixatch(イクサッチ)
奥田莉世・藤田波菜・白尾菜摘・宜野座梨央
ずっと自分たちが一番という気持ちで突っ走ってきて自信があったのですが、ほかのチームのプレゼンも素晴らしくて、見ていて自分たちが賞を取れるのか不安になりました。でも、やりたいことを貫けたし、みんなで協力して全力で作品づくりに取り組むことができたので、どういう結果になろうと後悔はないと思っていました。
賞をいただけて本当にうれしかったですし、商品化もしていただけるということで、誇らしい気分です。自分たちには100点満点どころか1000点あげたいです。