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ダイワ鮎マスターズ


DAIWA 鮎マスターズ2017 全国決勝大会 in 那珂川レポート

「鮎マスターズにおいて、3度目の栄冠を手にした者はまだ誰もいない」

前夜祭でそのことが話題になるのは、近年の恒例となっていた。それは2度の栄冠を手にしてなお、全国決勝大会に駒を進める“猛者がいるからである。

31回目を数える今大会では、昨年のチャンピオンである上田弘幸選手、再びこの舞台にカムバックしたベテラン伊藤正弘選手、そして昨年3位で9年連続の全国決勝大会となる瀬田匡志選手が出場。前人未到の偉業に王手をかけていた。

一方これまで8人もの選手が2度目の栄冠を手にしながら、誰も3度目に手が届かなかったこともまた、厳然たる事実である。技術や体力はいずれ古くなり衰える。チャンピオンが少しでも隙を見せれば、新しく台頭してきた選手に王座を奪われてしまう。

強い者が勝つのではなく、勝った者が強い。ダイワのテスター陣でさえも頂点を極めるには予選から出場しなければならない。ここがマスターズの厳格な部分であると同時に、抜きん出て高い優勝のステータスの源になっている。歴代優勝者の顔ぶれを見れば、それは一目瞭然だろう。

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前回大会優勝、上田選手からトロフィーの返還 今大会の白滝治郎競技委員長

河川状況

舞台は栃木県那珂川。前年は濁りを伴う増水が収まる気配がなく、支流の箒川塩原地区に会場を移して変則ルールが適用されたが、今回は予定通り本流で開催。

今年は長雨が続いていた関東地方。那珂川もその影響を受けて高水の状態が続いていたが、本来は瀬釣りの川と呼べるだけに、まったく悪いコンディションというわけではない。下見に入っていた選手の間でも評価は分かれ、パターンを掴みきれないまま本番を迎えた選手と、相当の手応えを感じていた選手とに分かれていた。

予選リーグ

[Aグループ]

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Aブロックの顔ぶれ。左から瀬田選手、伊藤選手、増淵選手、中塚選手

3度目の優勝を狙う瀬田選手と伊藤選手が顔を揃え、東日本ブロック4位の中塚明選手と地元大田原市在住で東日本ブロック2位の増淵選手の栃木勢が虎視眈々と金星を狙うAブロック。注目の第一試合、百戦錬磨の伊藤選手と瀬田選手がいきなりの直接対決。幅広くポイントを探る伊藤選手に対し、瀬を中心に攻めた瀬田選手が勝利。トーナメンターとして脂の乗り切った瀬田選手はそのまま勢いを駆って全勝。翌日の準決勝に難なく駒を進めた。

[Bグループ]

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Bブロックの顔ぶれ。左から土屋選手、出雲選手、井上選手、吉田選手

昨年3位のご存じ吉田健二選手、東日本ブロック5位の実力者である井上久行選手、吉田選手や瀬田選手とも親交が深い西日本ブロック3位の出雲肇選手、そして全国規模の大会で優勝経験もある中日本ブロック2位の土屋直史選手が揃ったBブロック。出雲選手が得意の瀬釣りで真価を発揮して3勝を手にした。

[Cグループ]

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Cブロックの顔ぶれ。左から上田選手、浅川選手、山下選手、木下選手

連覇と3度目の優勝を狙う上田選手を筆頭に、2度目の全国決勝大会で初優勝を狙う浅川進選手、その浅川選手を抑え西日本ブロック1位で21年ぶりの全国決勝大会進出をはたした木下英選手、中日本ブロック4位の山下選手が揃ったCブロック。本降りの雨に見舞われた注目の第一試合、浅川選手との対戦を制した上田選手が下馬評通り貫禄の強さで勝ち上がった。

[Dグループ]

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Dブロックの顔ぶれ。左から原島選手、西山選手、加藤選手、金沢選手

準優勝1回、4度目の全国決勝大会出場となる山梨の超実力者、金沢辰巳選手をはじめ、一昨年準優勝で3年連続の出場となる加藤達士選手、2年連続の出場となる東日本3位の西山順一選手、そして昨年準優勝の原島裕樹選手が集まったDブロック。混戦必至、もっとも読めないグループかと思われたが、初戦の対金沢戦を勝利した加藤選手が全勝で準決勝に駒を進めた。

[サプライズ]

画像 決勝戦が誕生日と重なり嬉しいサプライズ。
メモリアルな優勝を目指してください。
中夜祭では、大会中に誕生日を迎えた中塚選手にバースデーケーキのサプライズ。

決勝トーナメント

[準決勝A]

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中国地方を代表する瀬釣りの名手だけあり、那珂川でもその釣技を発揮する出雲選手。
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準決勝後半、左岸に渡って入れ掛かりを演じる瀬田選手。圧倒的な強さを見せつけた。

中夜祭恒例の準決勝組み合わせ抽選で上田選手と加藤選手、出雲選手と瀬田選手の対戦が決まった。準決勝は7番エリア(山渕・日暮)と8番エリア(永昌橋上下)が使用され、7番エリアで出雲選手対瀬田選手、8番エリアで上田選手対加藤選手の試合がおこなわれる。

ギャラリーの数も多い注目の一戦、同じ瀬釣りを得意とする出雲選手と瀬田選手の対決は一本瀬がエリアを貫く7番エリアが舞台。上流に瀬田選手、下流に出雲選手が入り試合開始。出だしは低調、瀬田選手がわずかにリードして前半を折り返すが、下流エリアに入ると瀬田選手は川を横切って対岸側へ。前日より水量が減ったことを計算に入れ、誰も竿を出していない左岸側からサラ場を狙い撃つ作戦に出た。そしてこの狙いが的中、怒濤の入れ掛かりで14尾対4尾と圧勝。危なげなく決勝進出を決めた。

[準決勝B]

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準決勝対戦前の上田選手と加藤選手。最初に入るポイントが勝敗のすべてを左右すると思われたが、予想外の展開となった。

中夜祭では「上田2世と呼ばれてきましたが、明日からは上田選手が“加藤2世”と呼ばれるように頑張ります」と静かな闘志を燃やしていた加藤選手。そして8番エリアはここまでの釣果から先に下流左岸側に入れた方が勝ち、そう選手同士も認識していた。ジャンケンの結果、先に下流に入ったのは上田選手。ほぼ勝負ありと思われた。しかし朝イチの低活性の時間帯を僅差で乗り切った加藤選手が後半にスパート。上田選手が狙っていた少し下流のポイントで一気に逆転し11尾対7尾で勝負を決めた。

[決勝戦]

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ギャラリーの注目を一身に浴びる決勝戦のオトリ配布。
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決勝戦前半、順調に掛ける加藤選手。闘争心は瀬田選手に一歩も引けを取らなかった。
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決勝戦後半、最初の1尾を掛けた瀬田選手。ここからペースを上げていった。

決勝戦は本部前、ホテル花月前の那珂橋を挟んだ上下流をポイントにおこなわれる。上流側は比較的大場所が短い区間に続くのに対し、下流側は中洲を挟んでバリエーションに富んだ瀬がエリア最下流まで続く。

ジャンケンに勝った瀬田選手が上流側、加藤選手は下流側に決定。試合開始の合図とともに瀬田選手は左岸を歩いて一気に最上流域の短い瀬を目指す。加藤選手は右岸側の分流を横切って橋の直下から左岸側のメインの流れに竿を出した。

第29回大会で両選手は長良川にて準決勝で対戦し、同尾数ながら重量差で加藤選手が勝利を収めているが、決勝で有岡選手に敗れている。加藤選手にとっては雪辱戦といえ、気合いも十分。8.5mの竿を駆使し、ときには極端なテンビン持ちなど竿の持ち方や角度を頻繁に変えて繊細な竿操作で順調に数を重ねていく。

上流の瀬田選手の動きは正確には分からないが、ポイントは下流側が多い。差をつけておきたいところだが、加藤選手が瀬の中ほどまで釣り下るとエリア交替の時間が来た。

下ってきた瀬田選手はやはり橋の直下からスタート。加藤選手とは逆の右岸から竿を出す。すぐに後半の1尾目をキャッチ。対する加藤選手は、瀬のポイントは瀬田選手が攻め切ったと考えたのか、橋上流のトロ瀬を狙う。

しかし、思うように釣果が伸びない加藤選手に対して、瀬田選手は瀬の中ほどから川を切って中州側に渡ると、手付かずの後半部分に竿を入れた。そして入れ掛かり。ペースの上がらない加藤選手を一気に引き離す。 終了時間が近付いても瀬田選手はペースが落ちないが、立て続けにバラしてしまうシーンが見られた。そのままサカバリを刺してオトリを放つ。

「どうしてイカリ針を替えないのだろう?」ギャラリーの間からも疑問の声が上がったが、後で思えば鉄壁のメンタルを誇る瀬田選手ですら、3度目の優勝を目前に平常心でいられなかったのかもしれない……。

 残り時間数秒前、有終の美を飾る1尾を瀬田選手がキャッチして試合は終わった。17尾対11尾での勝利。前人未到、3度目の優勝が決まった瞬間だった。

さまざまな思いが胸の中を駆け巡ったのだろう。竿をたたみ、仕掛けを巻いている間、その表情はいつもと違っていた。検量が終わり、勝利が決まった後もその声はこみ上げる感情を抑えられないでいた。数多くのトーナメントで勝利を収めてきた男をここまで昂らせるもの。それがマスターズ優勝の、しかも、これまで誰もなし得なかった3度目の栄冠の重みなのだろう。

表彰式が終わり、恒例の胴上げで宙を舞う瀬田選手。その表情は、いつもの明るい笑顔に戻っていた。

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こみ上げてくる感情を抑えつつギャラリーの待つ本部へと戻る。
表彰式では「決してひとりでは優勝できない」とも。
家族や仲間、関係者のサポートがあってこそ成し得た偉業。