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青木 大介




求めたのは“戦える”武器。
最高の瞬間を味わうために
24STEEZにまつわる電撃移籍の舞台裏、
復帰間もなくトップ50 A.O.Y.獲得の原動。
「『実はφ32mmスプールの計画がある』。そのひとことが、俺の背中を押した」
2022年末、4年間の米国ツアートレイルを終え、戦いの舞台を再び日本へと移すことを決めた青木大介。翌年からの国内戦復帰へと向けたストーブリーグの中、DAIWAとの契約を結ぶ決め手となったのは冒頭の通りだった。そう、24STEEZ SV TW100の開発は既に進み、そのキーマンとして招聘されたことに感銘を受けたことがきっかけとなったのだという。
「長らくφ32mmのベイトリールが主力。そのフィーリングを大切にしていて、他に替えを求めていなかった。度重なる話し合いの場で、DAIWAベイトの性能が良いのは重々承知だったが、自分のフィーリングにドンピシャでマッチするリールがないと断り続けてきた。φ34mmのDAIWAベイトをまずは持ち帰って試してくれと言われても、食指は動かなかった」
米国滞在中の際、また束の間の帰国の際、幾度ものDAIWAから契約の打診を受けるも「移籍は難しい。自分の中に気持ちがない」と首を横に振り続けた。
帰国を考えた当初は、再び国内戦に復帰する気持ちもなかった。数年メディアで活動したのち、再び気分が乗れば試合復帰の機会を窺うとも考えていた。だが、帰国直後から一転、青木の戦う本能は再燃し始めていた。
かつては国内最高峰JBトップ50で3度ものA.O.Y.を獲得してきた青木。だが、ひとたび国内を離れれば、そこに席はない。再び下部カテゴリーへ出場して年間上位の好戦績を叩き出さなければ、トップカテゴリー再昇格の権利は与えられない。
折しも元スポンサーは、青木が国内復帰を決めた年、JBから撤退を決めた。
「俺のリールを露出できない。何よりこれまで作ってきたルアーを試合で使うこともできない。これから作ったとしても、プロモーションさえできないジレンマが生じた」
元スポンサーからの引き止め、DAIWAからのオファー。それでも青木は移籍を躊躇った。
「俺の開発したモデルをこれまで買ってくれたユーザーに申し訳が立たない」
青木自身の道義心がそこにある。ただ何より、国内戦復帰に際して本気で戦っていく上で、タックル面で支障が出ることだけは避けたい。いつしか冒頭の通り、青木の衝動は突き動かされたのだった。
24発表まで空白の1年
開花へ向け守備固めの1年

24STEEZ SV TW発表前の1年間は、JBセカンドカテゴリーのマスターズ、ローカルシリーズの河口湖A及びBの3シリーズに参戦。翌年にトップカテゴリー・トップ50へ復帰する権利を得るには、1シリーズではなく3シリーズへと幅を広げ、どれか1つでも年間上位を獲得する必要があった。
「スピニングはDAIWAが明らかに優れていることは以前から知っていた。それまで以上に軽快に扱うことができた。ベイトはφ32mmスプールが自分の右腕とはいうものの、他が使えないわけじゃない。自分のこだわりであって、フィーリングの問題」
この年の主軸となるベイトリールはSTEEZ LIMITED SV TWとジリオン SV TW。共にφ34mmスプールだが、いずれもシャロースプールへと換装することでφ32mmのフィーリングへ近付けて使っていたという。
「今でこそSTEEZは24STEEZ SV TWが主力だが、ややボディの大きいジリオンは力強い巻きに向いている。3/8oz.以上のスピナーベイトなど、しっかり手で包んで巻くときはこれくらいの方が手に馴染む。今もデッキに並ぶ武器のひとつ」
2023年に全戦出場した3シリーズはいずれも好戦績を収め、中でも河口湖Bでは年間2位を獲得。1位選手が現役トップ50選手のため、昇格権利は繰り下げとなり、青木はわずか1年でのトップ50再昇格を決めた。
翌2024年、実に6年ぶりのトップ50復帰と同時に、24STEEZ SV TWがその手に握られることになった。
「もうこれしか使えないな。そう語ったこともある。一番自分の釣りでやりたいことが幅広くできる。軽量コンパクトで軽く握りやすく、自然とシェイクのリズムも刻みやすい」
スピニングでもベイトでも、青木の真骨頂は繊細なシェイク。独特のリズムが竿からライン、そしてルアーへと生命感を与え、獲物の食い気を誘いバイトへと繋ぐ。まるで青木だけ別次元にいるかのような瞬間が度々起こる。その原動力は道具への信頼の証とも言えそうだ。
トップ50昇格後も国内復帰初年度と同様に、マスターズと河口湖ABでフル参戦に挑み、この2年は12+5の計17戦に出場。若手を彷彿とさせる試合数だが、43歳となった今も現場に立ち続けるのが国内復帰後のスタイル。現場のリアル、フィールドの今を常に肌で感じ続けることが、青木の成長を促し続けている。
「もうこれしか使えないな」
テスト時に手が得た直感

シーズン中は毎週のように開催されるトーナメントの合間を縫って、STEEZ SV TW100の開発は秘密裏に行われてきた。
「最初に触ったのは真冬。2月だったと思う。プロスタッフ数名が集まって丸一日投げ倒して、DAIWAエンジニアと共にブレーキのセッティング出しを詰めていった。24STEEZはまさにプロスタッフみんなで作り上げていったリール」
まだ数に限りがある初期プロト。そのフォルムはまだ今とは異なっていた。テストの場は某所の管理釣り場。一般アングラーにその形状を悟られてはならないためだ。
テストは飽くまでブレーキシステム・SV BOOSTが対象。新たに搭載されるφ32mmG1ジュラルミン製スプールとの相性を確認すると共に、複数のプロスタッフによるフィーリングの確認作業。ひとりでは偏りがちなデータを複数人が検証することで、誰でも快適に扱える最適値を割り出せる。
「テストってこうなんだなって。いや、こうあるべきものなんだなって再確認した」
DAIWAの開発姿勢にリスペクトの感情が生まれたという。だが、この時点では24STEEZ SV TWの本領は確認できていない。後に「もうこれしか使えない」と確信に至るきっかけとなったのが、初夏6月の野尻湖でのこと。次なるテストも複数のプロスタッフと共に行われた。
「前回のテストでの結果が反映されているかの確認。続けて、どのくらいのルアーまで使いこなせるのかを試していく中、この時点で既に実戦で使うイメージが湧いてきた」
このテストでは調整済みの内部構造に加え、そのフォルムも既に完成品と同等の仕上がりを見せていた。16STEEZとの比較で、中心軸から左右3.1mmのコンパクト化は青木の手に吸い付くように馴染んでいた。
「初登板は23オールスター。1/4oz.テキサスをアシに撃ち、シェイクしながら上から段階的に落としていく釣りで『もうこれしか使えないな』って」
翌年から青木の主力機となったことはもはや言うまでもないだろう。
φ32mmスプールを軸に
さらに戦力を増強の時へ

トップ50復帰から2年目となる2025年。青木はシリーズの折り返し地点となる第3戦遠賀川で優勝を勝ち獲るや、年間暫定2位に浮上。最終戦霞ヶ浦を前に暫定首位との差をわずか1ポイントまで詰めた。
折しも個体数の減少が叫ばれる霞ヶ浦水系。長い夏を過ぎ、秋の兆しを見せはじめた季節の狭間は、バスの活性を著しく低下させていたことは間違いない。
ところが青木は初日から気を吐いた。2本のビッグフィッシュを仕留めトップウェイトで試合をリード。2日目は1本ながらもキロフィッシュを仕留め、予選2位での決勝進出。最終日決勝はプレッシャーが極まり、半数がゼロ申告となる中、またしても価値ある1本を仕留め、表彰台上の2位を獲得した。同時にA.O.Y.レースも制して、堂々の年間首位に輝いたのだ。
2017年以来、通算4度目のA.O.Y.。史上首位タイを記録。DAIWA移籍後、初のビッグタイトルの獲得となった。
トップ50通算6勝目を飾った遠賀川、準優勝に輝いた最終戦霞ヶ浦。共に帰着まで残り2時間を切った段階で、起死回生の1本を仕留めた青木。遠賀川に至っては2本目も捕獲した。通常であればもはや諦めも脳裏にチラつく時間帯だが、攻めの姿勢を貫いた結果がそこに現れた。
「経験をうまく活かせるようになってきた。プラで見つけたヒントが試合で活きる。勝つ時ってそういう感覚がある」
青木に2025年のMVPタックルを訊くと、「間違いなく24STEEZ SV TW」と即答。6勝目の原動力であったことに加え、青木のデッキには常に使い込んだ複数台が並んでいたことがそれを物語っている。
「来季はSV LIGHT TWの出番が確実に増える。元々φ32mmはベイトフィネス寄りもこなせる包容力がある。ギア比9.2も魅力」
青木の戦力がさらに増強され、歓喜の咆哮「Feel Alive」を聞く機会も増えていきそうだ。