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並木 敏成




「すべては“釣る”ために」
情熱を形に変える20年の軌跡
TEAM DAIWAの意志を継ぐMr.STEEZ。
その足跡が未来へと続く歴史を紡ぐ。
「TD-Zの存在はあまりにも大きかった」。
『STEEZ』――。DAIWA最高峰のバスフィッシングブランドを語る上で、キーマンとなるのが並木敏成。2006年のブランド立ち上げから、今季2026年に20周年を迎える上で、彼抜きでその歴史は語れない。
2000年代初頭、当時その手にはDAIWA最高峰バスロッド・TDバトラー及び同リミテッドの名竿たち。そこに組み込まれたリールは、そう、並木が愛してやまないベイトリールの傑作・TD-Zだった。TDとは、即ちTEAM DAIWA。90年代から長らく築き上げてきたDAIWA最高峰ブランドにして世界最強チームとしての名称。高い壁がそびえる。
今でこそベイトリールは軽量化が進み、ボディを包み込むパーミングを省き常に親指をサムレストに置くことは珍しくない。だが、並木は今から四半世紀以上もの前から、ロッドのトリガーに人差し指を挟むワンフィンガースタイルが主軸。それこそがピックアップから矢継ぎ早に放たれる“マシンガンキャスト”の根幹。レフティの並木は常に左手にロッド、右手で巻き、咄嗟のバイトにも瞬時に反応できるスタイルが定着していた。
「バスフィッシングにおいて、軽さがデメリットになることは何もない」
TD-Zは当時としては異例の175g。軽量コンパクトなボディは並木のクイックな動作にも馴染み、セッティングも絶妙だったという。
もはや並木の戦友とも言えるTD-Z。次に発表を控えるモデルの開発は、実は5年半も前から秘密裏に進んでいた。それは並木がBASSMASTER参戦のため渡米していた第1期目の4年間を終えて帰国後の2000年のこと。まだTD-Zさえリリースされていない頃のことだった。
現代へと続く新機構
史上最軽量への挑戦

並木は国内におけるビッグタイトルを総なめにした後に渡米するや、わずか1年で日本人初となるBASSMASTERクラシック出場など、トーナメントプロとしての華々しい実績を積み上げてきたことは広く知られる。またメディアでは前述のマシンガンキャストを始め、鮮やかな離れ技の数々を魅せ続けてきた。パフォーマンスのみならず実績を伴った真のプロフェッショナルは、世の熱い支持を一手に引き受けた。
その一方で、並木はベイトリールの構造にも造詣が深い。並木は新卒社員としてダイワ精工(現グローブライド)に入社してリール企画課に所属していたキャリアがある。そんな経緯も、次世代リールの開発に深く携わる理由となった。
退社してバスプロとして独り立ちして以降もDAIWAベイトの歩みを見つめてきた。一時は渡米資金を賄うべく他社モデルに乗り換えた時期もあった。BASSMASTERクラシック出場を果たした渡米第1期の途で、改めて手にしたTD-Zに至るまでに、様々なテクノロジーが進化したことも確認していた。
「ハンドルがボディから離れ過ぎていた。巻きの軸はボディに近い方が、より安定した巻きができる」
長らくベイトリールと向き合ってきた中で、どうしても解消したい構造があった。今なお並木のガレージに残るのは、オフセットハンドルを搭載したTD-Z。大きな回転を要せず手首だけで巻くことを可能にしたワンオフ。今でこそ標準装備のパーツだが、検証の末、次世代モデルへの採用が決まる。同時に各部も研ぎ澄まされる。
「トピックになったのは、当時最軽量の軽さだったね」
実に155g。その数値は人知を超えたスーパーマシンとさえ言わしめた。ボディ剛性を維持したまま、徹底的な軽量化を果たした怪物。またロープロの極限を求め、TD-Z比1.5mmの低床化でグリッピングを向上。スプール素材に超々ジュラルミンが採用されたのも初の出来事。さらに軽量化したスプールは、マグフォースVとのマッチングでキャストフィールを格段に向上したのだった。
2006年4月、新たに誕生した次世代機が『STEEZ 103H』。
今改めてボディを見渡すと、フロントにサイド、そしてハンドルノブに至るまでSTEEZのロゴが見える。新たなるDAIWA最高峰ブランドを世に広く認知してもらうためのギミックであったことは今でこそ語れる。
時代を変えたSVとTWS
勢いを増すハイギア化

「こんなに釣りが楽になるとは…。アメリカ参戦時代にこれがあれば、もっと勝てたかもね」
並木がベイトリールに劇的な進化を感じたのは2013年『STEEZ SV』の登場だった。
初代のボディはそのままにSVスプールへと換装したSTEEZは驚くべき進化を遂げた。当時のSVとは、Stress free Versatileの略称。当時鳴り物入りで登場したTWSの先駆け・T3 SVと同時リリース。スプールには高強度&軽量のG1ジュラルミンが採用されたのもこの頃だ。
「例えるなら初代STEEZはマニュアルシフトのレースカー。ドライバーの技術を要した。対してSVはオートマ車。誰もが簡単に安全に乗りこなせる」
緻密なサミングを要せず過回転によるバックラッシュも低減。もはやノンストレス。
「ベイトリール界のすべてが変わった。もはや世界最高レベルに到達したと感じた」
より完成度を高めたSTEEZには2014年、初のリミテッドモデルが登場する。一方は8.1のXHギアを搭載した撃ちものスペシャル『LTD.SV 105XH』、もう一方は6.3で巻きに特化すべくブラッシュアップを遂げた『LTD.SV 103H-TN』。後者は並木のイニシャルを冠したシグネチャーモデルであることは言うまでもない。
「リールを手がけることで始まった自分の釣り人生の結晶。世界最高峰とも言えるリールに自分の名が入った。感無量だった」
赤と黒、ツートンのボディには見る者を圧倒する迫力さえ漂っていた。
春に登場したTNの一方で、その秋にまたエポックメイキングな出来事があった。それまでオープンフラップ型だったTWSが、ターンアラウンド型へと進化。夏にアメリカ市場の見本市・I CASTで発表された初代TATULAは間もなく、国内仕様として世を賑わせることになる。
幾度ものファインチューンが施されたTWSが満を持して投入されたのは、2016年リリースの第2世代『16STEEZ SV TW』。SVとの融合を果たした画期的な新構造だ。
「飛びの放出抵抗がなく、なおかつ巻きでの接触抵抗もない。もうこれ以上はないんじゃないかとも感じた」
ギア比は6.1、7.3のみならず、8.1へ。着々とハイギア化が進んでいったのもこの頃だ。
26STEEZ SV LIGHT TW誕生
第3世代、熟成の時へ

「2018年の『SVライトリミテッド』の存在は大きかった。キャスタビリティのレベルが格段に上がった」
並木ほどのプロフェッショナルを以ってしてもこう表現される名機。この頃には2010年代中盤までにベイトフィネスという新たな手法が成熟。次なる着地点としてノーマル機のフィネス寄り、ベイトフィネスとの隙間を埋める存在が求められた。5〜7gという境界線がその目安だ。
「φ32mmスプール。実釣において不足のないラインキャパ。STEEZのシェイプそのままにφ34mmからの小口径化。太糸でも軽めのルアーが軽快に飛ぶ」
隙間を埋める存在、誰もが求めていたストライクゾーン。ただ惜しむらくは「レベルワインドにTWSが非搭載だった」ことだ。にもかかわらず、SVライトリミテッドがもたらした軽快性は世の熱い支持を受け異例のロングセラーとなった。
2026年、φ32mmスプールの24STEEZに続く第3世代STEEZとして産声をあげるのが『STEEZ SV LIGHT TW』。いよいよあのモデルに最高峰の名が冠された。
「24STEEZで使うルアーより軽め、5〜7gのルアーが圧倒的に投げやすい」
第3世代の完成度が極まっていく。いずれも軽量かつコンパクトで剛性感も高い。時代の変化とともに、使い勝手が向上していく。
「極め付けはギア比9.2:1。ハンドル1回転92cm。撃ちの釣りで優位に立てる。クランクにしても俺はローギアを使わない。持ち替えて感覚を変えたくない。自分で巻きのスピードを変えればいいだけ。何より掛けてからの回収力にスピード感が欲しい」
竿は変わっても掌の中は変えたくない。限界ハイスピードは相手に主導権を与えぬままにゲームを完遂できる。
何より“釣る”ことに最大のプライオリティを置く並木の矜持がそこに垣間見えている。