廃棄漁網を通じて
新たな付加価値を持った
アパレル製品の創造を目指す
産学連携プロジェクト
BE EARTH-FRIENDLY×COLLECTION WORK HRD PROJECT
未来を担う学生たちが
企画立案したアイテムをDAIWAが商品化
フィッシングブランドであるDAIWAは、サステナブルなものづくりへの取り組みとして行っている「BE EARTH-FRIENDLY」 -漁網アップサイクル産学連携プロジェクト-の一環として、日本最大のファッション専門教育機関「文化学園大学」とコラボレーションを実施。
学生たちが1年間の授業を通してアイテムの商品企画から展示サンプル制作、プレゼンテーションまでを一貫して行う「BE EARTH-FRIENDLY × COLLECTION WORK HRD PROJECT」を開催しました。
今年度の授業に参加したのは全11チーム。ファッション業界を夢見る学生たちはどのように作品づくりに取り組んだのでしょうか。その様子と気になる結果を全4回にわたり紹介します。
- 第1回 -
漁網アップサイクルプロジェクトとは
グローブライドのサステナブルな
ものづくりへの取り組み
環境保全活動の一環としての
「漁網アップサイクルプロジェクト」
グローブライドのフィッシングブランドであるDAIWAが、2009年から取り組んできた環境保護プロジェクト「BE EARTH-FRIENDLY」。
このプロジェクトでは早くから海洋環境の悪化を問題ととらえ、釣り場の清掃活動、環境に配慮した製品づくり、不要となったウェアのリサイクルなど、多くのプログラムを実施し環境保全に取り組んできました。
そして2022年3月に新たに始動したのが、廃棄漁網をアパレルアイテムに再生する「漁網アップサイクルプロジェクト」。多くの漁業関係者が頭を悩ませている廃棄漁網にスポットを当て、その活用に取り組むようになりました。
廃棄される漁網を活用し、アパレルとして新たな価値を付加するプロジェクト
埋め立て処理するしかなかった廃棄漁網に
付加価値を加えて生まれ変わらせる試み
近年、漁網は環境保全の観点から各所より問題視されてきました。漁網は自然分解されにくいナイロンやポリエステルなどのプラスチックでできていますが、使用済みの漁網は産業廃棄物であることから焼却処分ができず、現状では土に埋めるしか廃棄する方法がありません。毎年大量の廃棄漁網が生まれ続けることを考えると、この方法に限界があることは明白でした。
そこでDAIWAが始めたのが、廃棄漁網をアパレル製品に生まれ変わらせるという試みでした。北海道の漁業従事者を束ねる北海道漁業共同組合と再生素材メーカーのリファインバース株式会社の協力を得て、単なる再利用ではなく、廃棄物に新たな価値を加えるアップサイクル事業に着手したのです。
このプログラムにより、北海道の漁業関係者から回収した廃棄漁網はナイロン素材の生地に姿を変え、レインウェアなど北海道で働く漁師のワークウェアとなって新たな生命を得ました。漁業とは関係のない製品にリサイクルされるのではなく、漁業関係者から漁業関係者へと循環する再生の輪は、サステナブルなものづくりの新しい形だといえるでしょう。
漁師が使用していた漁網を透湿防水レインウェアに再生させて、再び漁師の元へ。
サステナブルなサイクルができあがりました
産学連携の一環として、
大学の専門科目とコラボレーション
文化学園大学との共同プロジェクト
優秀作品はD-VECの商品として製品化
廃棄物であった漁網を再生し新たな付加価値を与える「BE EARTH-FRIENDLY -漁網アップサイクルプロジェクト-」はこれまで積極的に活動を展開してきました。
表参道ヒルズにおけるローンチイベントや、フィッシングショーOSAKAでの展示。さらに楽天ファッションウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)への参加、グローブライドのアパレルブランド「D-VEC(ディーベック)」における漁網リサイクルTシャツの販売など、そのアプローチの方法は多岐に渡ります。
その中で、産学連携プロジェクトの一環として行われているのが、文化学園大学の専門科目「Collection WorK Ⅱ」とのコラボレーション「BE EARTH-FRIENDLY × COLLECTION WORK HRD PROJECT」です。
この科目は、同校の服装学部ファッションクリエイション学科3年生を対象とするもので、チームに分かれた学生たちは、環境やジェンダーなどさまざまな社会課題への理解を深めながら作品のテーマやコンセプトを検討。DAIWAが提供したリサイクル素材を用いて、新たな付加価値を持つファッションアイテムの創造を目指します。
ファッション業界で活躍することを目指す学生たちにとってうれしいのは、審査の結果優秀な作品は「D-VEC」の製品として実際に販売されることです。DAIWAは、こうしてファッション業界の未来を担う学生と連携することで、ファッション業界を取り巻くネガティブな環境問題をはじめとする諸問題を、ポジティブな視点へと変換していく努力を続けています。
2023年の「釣りフェスティバル」や「フィッシングショーOSAKA」での展示の様子
表参道ヒルズでのローンチイベントの様子
廃棄漁網を原料とする
再生ナイロン樹脂、REAMIDE®
アパレル製品に使用されているのは、リファインバース株式会社が開発したREAMIDE®という再生ナイロン樹脂です。回収された廃棄漁網は、リサイクル工場で分別・切断・洗浄・粉砕という過程を経て、ペレット状のREAMIDE®へと生まれ変わります。
この樹脂は以前から自動車部品や建材などには使用されてきましたが、リファインバース社はさらにこれを糸状に加工することで、アパレル素材として使用できるようにしました。現状ではREAMIDE®のように使用済みの廃棄漁網をアパレル素材として再生しているケースは少なく、新たなリサイクル素材としてファッション業界で注目されています。
「BE EARTH-FRIENDLY × COLLECTION WORK HRD PROJECT」で使用されるのも、こうした素材。授業に参加する学生たちは、漁網から生まれた生地の特性を理解したうえで自分たちのイメージと融合させ作品を生み出す検討を重ねました。
中央が回収した漁網を裁断したもの。これがナイロン樹脂、糸へと姿を変えます
漁網に付着している汚れや異物は徹底的に洗浄・除去され、高品質なナイロン樹脂に加工されます
グローブライド担当者が参加する学生に向け、再生した生地について解説を行います
漁網からできた生地に実際に触れる学生たち。これを作品にどのように生かすか、イメージを膨らませます
文化学園大学の学生が
廃棄漁網をファッションアイテムに
2023年度も実施された
「BE EARTH-FRIENDLY」- 漁網アップサイクル産学連携プロジェクト -
そして2023年10月より、産学連携プロジェクト第2回目となる「BE EARTH-FRIENDLY × COLLECTION WORK HRD PROJECT」がスタート。2023年秋にはグローブライドのアパレル担当者が同校を訪れ、「BE EARTH-FRIENDLY -漁網アップサイクルプロジェクト-」についてプレゼンテーションを実施し、その概要や意義を説明しました。優秀作品は「D-VEC」の商品として受注販売されることが決まっているだけに、学生たちのモチベーションはかなり高く、誰もが真剣な眼差しで話に聞き入っていました。
参加する学生たちは11チームに分かれ、1月に行われる審査会に向けてここから制作を開始。デザイン、素材選び、パターン作成、裁断、縫製などすべての工程を自分たちで手掛け、作品を完成させなくてはなりません。
果たしてどんな作品たちが生まれたのでしょうか。ファッション業界を夢見る学生たちの奮闘と結果は次ページ以降でお伝えします。
グローブライド担当者によるプレゼンテーション
漁網からできた生地をつかった実際の作例も紹介
本物の漁網に触れる学生。その質感を確かめます
どのような生地をどのように使うのか、作品づくりはすでに始まっています