軽量、近海ジギングロッド
R for Jigging
都市近郊の青物狙いに照準
ソルティガR
金満:今年のニューモデル、ひとつはソルティガR、もう一つはソルティガAP(エアポータブル)という3本継のロッドです。Rは新しいコンセプト、APは従来モデルのリニューアルのロッドになります。
ー では、まずソルティガRですが、開発の意図はどんなところにあるのでしょうか。
金満:最近は当社のベイジギングのようなライトなスタイルも定着していて、PE1.5号から2号で青物までカバーする現状があり、その一方で、PE4号以上でカンパチやヒラマサを狙うというヘビーなスタイルもあります。そんななかで人気が高いのが全国的に増加中のブリ、ヒラマサ、サワラです。都市近郊の釣り場はアクセスが良く、PE2号〜3号のジギングは入門者にも入りやすいホットゾーンです。そこをもっと快適に、そしてより戦略的に、ということを追求したのがソルティガRです。
多様化するジギングカテゴリーのなかで最もホットなPE2〜3号タックルを追求したソルティガR。同一パワーに弾性率の異なる3機種をラインアップ。
ー ジギングが年々ライト化されるなかで、最もベーシックなジギングタックルを見直すということですね。
金満:はい。ジャンルのオーバーラップしている部分というか、ベイジギングのロッドは思った以上に強く、それでも十分にやれてしまうのですが、外洋である程度の魚を狙うとなると不安を感じることもあると思います。それとやはり、これまでのジギングロッドはまだ重い。強度を保ちつつ、もっと軽くすることでより快適なジギングが可能となります。また、ベイジギングロッドはガイドが小さいので、太いリーダーに対応しにくいんですね。そこを埋めるロッドを、ということです。
ー ラインナップは何アイテムを設定していますか。
金満:60S-3HI(ハイレスポンス)、62S-3LO(ローレスポンス)、64S-3MD(ミッドレスポンス)の3アイテムです。ちなみに記号の「3」は最大でPE3号という意味です。
ー ジグウエイトではなく、ライン号数がパワーの基準というのは珍しいですね。
金満:もちろん最大ジグウエイトの表示はしていますが、これはあくまでも参考値です。水深も変われば潮流も変わるなかで、適合ウエイトは変わっていくものですから。また、あえてやわらかめのロッドに重いジグを背負わせたりすることもあります。それならば、使うラインに応じてロッドを選ぶほうが分かりやすいと。また、普通なら同一シリーズにはパワー違いの機種を設定するのですが、このシリーズはパワーを変えずにハイ、ロー、ミッドと弾性率の異なる3タイプを設定し、目的別、スタイル別の切り口で展開しています。同じ3号クラスでも、竿の特性とジグの組み合わせによっていろいろな攻略パターンが生まれますよ、という提案でもあります。
PE3号をMAXに、ハイレスポンス、ローレスポンス、ミッドレスポンスとスタイルに合わせた使い分けを提案。それぞれの釣り方に適したロッドを選ぶことで、より快適かつストレスフリーなジギングを実感できるはずだ。
ー 各タイプで微妙にレングスが違いますが、その意図は?
金満:ハイレスポンスモデルの60は、スピーディにキビキビとジグを動かすための設定。ローレスポンスの62は長すぎず短すぎず、バーチカルジギングのワンピッチジャークに最適です。ミッドの64は投げるためのレングスですが、長すぎてもいけない。そんなバランスで決めています。ちなみにどのロッドもPEラインはMAX3号ですが、ジグのMAXウエイトはモデルごとに変えています。使い方によってロッドに掛かる負荷が違いますから。それをアングラー自身が合わせていくこともできますが、適したロッドを選ぶことで、より快適かつストレスフリーなジギングを実感していただけると思います。
ー 開発の過程でこだわったのは、どんなところですか。
富樫:一番は軽さですね。従来のソルティガとソルティガRでほぼ同じスペックのものを比較すると、例えば62レングスでは約40gも軽くなっています。グリップもより軽さを実感できるように、外径の細いものを採用しています。また、軽いだけでなく強度があることもソルティガRの特徴です。
ナノプラスの応用で軽さと強度を両立
X45でネジレも抑制
ー 軽さと強度はどのようにして両立しているのですか。
富樫:テクノロジーの部分では、ナノプラスという技術を使うことで強度を維持しつつも軽くすることが可能になりました。これがRの軽量化に結び付いています。また、アイテムによって違いはありますが、たとえば中弾性のモデルはキャストすることを想定して、ある程度バット部を太めに立ち上げたりもしています。あとはX45ですね。これはトップからバットまで全体を斜め45度の繊維で補強し、ネジレに対する剛性を高める技術です。今回はとくに、ロッド自体がジギングロッドのなかでは比較的柔らかい調子になっているので、そのぶん肉厚が薄く径が細い。ネジレも発生しやすいのですが、ロッド自体を硬くせずにそれを解消するのがこのX45の仕事です。X45はブランクスの最外層に巻くのですが、バイアスクロスの存在が肉眼で見えるというのも大きなポイントです。細かい部分では、キャスティングを考慮して元ガイドをダブルフットにして小技もこなせる設計です。
継ぎ目を感じさせない
マルチピースロッド
AIRPORTABLE
for Casting/Jigging
軽さと強度が劇的に進化ソルティガエアポータブル
金満:エアポータブルは今回、キャスティング用3アイテムと、ジギング用1アイテムの計4アイテム。いずれもスピニングで、表示の6、8、10はソルティガRと同様に適合PEの号数です。
ー どんな点をリニューアルしたのですか。
金満:重さや張りの強さを改善すると同時にX45の進化版を搭載し、ジョイントの部分はVジョイントαという新しいテクノロジーで強化しました。その結果、ジョイント部分がきれいに曲がって、強度もあるというのが大きな進化ポイントです。重さは前作と比べて強烈に軽くなっています。またジョイントは印籠継ぎでしたが、今回は並継を採用しています。
富樫:何も言わずに使ってもらうと、グリップジョイントのロッドと間違えてしまうくらい曲がりがスムーズです。自重も現行品の83XHSで460gですが、新しいエアポータブルは90gくらい軽量化されています。ガイド自体の重さは変わっていませんし、グリップを細くした分、軽くなってはいるのですが、やはりブランクスの軽量化が一番です。Vジョイントαやナノプラスといった、いまある最高の技術を使って最高のバランスでセッティングすればここまでできる、というのが新しいソルティガAPの特徴です。
進化したAP
キャストを続けるほどに疲労感の軽減を実感
ー 印籠継から並継に変えたのはどんな理由からですか。
富樫:印籠だとロッドの真ん中に7g前後の芯材が乗っているのですが、試しにこれを取ってみたら振り調子が格段に良くなったというのが一つ。もう一つは、並継にすると必然的にバットが太くなるので、パワーを持たせやすいんです。基本大物狙いのロッドなので、途中までは曲がり込んでも最後の最後は残しておきたい。そういう狙いに対しても、並継は有利でした。
ー ジギングモデルも同様でしょうか。
富樫:ジギングはバットジョイントでMAX6号。ジグは300gまでしゃくれます。ただし前作ほど張りが強くなく、使いやすさもアップしています。
金満:ゴツさは全然違うよね。もともとAPは遠征を想定したロッドですが、今回のモデルは近海でも十分に使えます。
最高の技術と最高のバランスセッティングで重さと張りの強さを解消。その進化は劇的ですらある。
ー 張りの強さというのはどこで調整しているのですか。肉厚、テーパーなどあると思いますが。
富樫:肉厚を調整して、テーパーも調整して・・・・・・両方ですね。肉厚のロッドには肉厚のメリットがあるのですが、今回はより多くの人に使ってもらえるように、肉厚を抑えて魚が急に突っ込んだ時にも耐えやすいように設計しました。あまりにも肉厚だと、強く引かれたときに体ごと持っていかれてしまうことがありますが、強度に支障がないレベルまで肉厚を抑えることでロッドが少したわみ、アングラーの負担を軽くしてくれるような設計です。補足するとすればVジョイントα。ジョイント部分にナノプラスを応用したことで、スムーズに曲がるけれど強度はさらに出るロッドになりました。
ー リールシートもスリムになった印象ですが、大型のリールを装着しても問題ありませんか。
富樫:もちろんです。新しいソルティガリールはフットの形状を見直して、細身のグリップでもなじみやすいように開発していますが、ロッドもそれに合わせて設計しているので問題ありません。好みもあるので太いグリップがいいという人もいると思いますが、この仕様ならより多くの人に使っていただけると思います。ただ、10号クラスのモデルのみ、ひと回り太い22mmのグリップになっています。
ナノプラス技術の採用でさらに進化したV ジョイントα。3ピースを感じさせない滑らかな曲がりと強度を兼備するだけでなく、印籠継から並継に変えることで軽量化も達成。
金満:この釣りをずっと続けるためという見方をすれば、絶対に軽さは必要なんです。強度が保てるならば軽いほうがいい。そこを追求できるのが総合メーカーとしての我々の強み。ピンポイントに特化した訴求ではなく、幅広いニーズに高品質で応えていくことがダイワの仕事です。
富樫:使い勝手がよくなって、一日キャストを続けても疲労度が違うと実感できる。8号のロッドでも6号を振っているくらいの感覚で釣りができます。
金満:ジギング需要は高まっていますが、どちらかというとSLJなどのライトな方向です。ただ、それをきっかけにジギングを始めた人が、大物志向へという循環はあるはずです。そうした環境を作り、アングラーに次のステージを提案することも大事ではないかと思っています。
強度に支障がないレベルまで肉厚を抑えることで、大物とのファイトにおけるアングラーの負担も軽減。強く引かれたときに竿がたわみ、無理なくランディングへと導く。
ー しかしこれだけ進化すると、今後も同じように進化させるのは難しいのですね。
富樫:いや、やりたいことはまだまだたくさんあります。作っている僕自身、まだ全然満足していませんし、将来的に実現したいアイデアもあってネタは尽きません。
金満:今までも、もうこれ以上はないだろうというところからずっと進化してきましたからね。コンパクトで軽くて強度もあって、遠征時のパッキングや小型車への積み込みも気にしなくてよい、今回のAPもそうです。1ピースがいらないと思えるくらいの進化を実感していただけたらと思います。
PROFILE
金満秀幸(右):オフショアロッドの企画を担当。大物小物を問わずソルトゲームの経験も豊富。富樫祐毅(左):ロッドの設計を担当。テストや動画撮影等、フィールドワークも多忙を極める。